飯尾 潤 NTT出版 2008/3
以前ご紹介した、『日本の統治構造』の飯尾教授が、固有名詞を出しながら、中曽根内閣以降の日本政治を整理しています。理論化が進むというよりは、前著の検証のように読めました。
タイトルの言葉は、このように説明されています。
政治家同士の権力闘争が発動された状況が政局である。そして、政治家というのは政局をする動物であって、政策というのは官僚の領域だというように分けて理解されている。p.21
これまでの日本の政治は、「観客民主主義」だとしています。
自民党総裁選を、「自民党戦国史」的に、おもしろおかしい人間模様としてみている。フツウの有権者は観客として、一国の首相を決める争いを見ることになる。誰が買った、誰が負けたという個性の争いだと認識して、自分たちが選択できる問題だというようには感じていない。人間関係を中心とした政治評論家の解説を見て満足するという観客民主主義になっている。p.21
自民党体制が完成した80年代には、政策、選挙、政局が別々に進行するようになりました。p.33 その象徴として、リクルート事件後の権力継承を挙げています。消費税導入という政策の大転換が、選挙と関係なく進行し、竹下首相は辞任した後も、政局の中心にいました。
本書の主旨は、過去20年間に、政策の比重が重くなってきたというところにあります。
このように、政治において、政策処理の重要性が高まった背景として、日本が転換期にあることが指摘できる。高度成長期においても、社会の変化は、むしろ現在より激しかった。しかしながら、変化の方向性は一定であるから、予想も立てやすく、また対処方法についての合意も得やすかった。そうした時代に、官僚がつくる政策の有効性は高い。
しかし、将来の見通しが不透明な時代には、不確実性のなかで決断せざるをえなくなる。そして、それは政治家の仕事である。p.244
こうした不確実性のもとで決断をするためには、政治家が民主的な正当性を持たなければならないとしています。
その選挙で争う政策の対立軸として、著者は、安心再生型と信頼創造型を挙げています。これは、以前紹介した山岸俊男さんの「安心社会から信頼社会へ」と同じ概念です(p.254)
ドラマでは月9のCHANGEが政治の世界をわかりやすく説明してくれていますが、本書は政治学の角度から、実にわかりやすく政治の現状を説明してくれていました。
では。