清水真人 日経 2007/ 5
日経の編集委員による小泉内閣の経済運営ドキュメント。竹中大臣、飯島秘書官、高橋内閣参事官の本が、インサイダーの3部作とすれば、外から見た小泉内閣論です。昔は、日経少年探偵団とか、言われていたこともありましたが、第一級のドキュメントに仕上がっており、週刊東洋経済の「2007年決定版「経済・経営書ベスト100」に入っています。
最前線の記者らしく、あくまで、アリの眼で政治を追っているのですが、400ページを一気に読ませてしまうのは、政治の本質を見抜いているからだと思います。小泉内閣でいえば、党内基盤が弱いのにもかかわらず、総理大臣の権力(人事権・解散権)をフル活用したことです。長く、非主流派にいたからこそ、骨身にしみていたのでしょうが、そうした手をうつタイミングが絶妙だったのが、よくわかります。
外にいては、なかなか伝わらないことですが、税制・財政の問題については、政府・自民党でかなり突っ込んだ議論がなされていたのが、わかります。時には、首相が「神学論争」と苦言を呈することもあったのですが、こうした政策決定プロセスを垣間見ることができるのは、収穫でした。
福井総裁が、金融政策を変える模様を描いているのは、さすが、日経の記者ですね。この本が出版された後に、総裁人事でもめるわけですが、政府と日銀の距離感がよく理解できました。
読み終えると、あらためて、政策決定のプロセスが変わってきているのがわかりますね。わかりやすく説明しているのは、月刊現代2008年6月号 P.8 の高橋洋一氏の論文「これが政策決定の新常識だ」だと思います。これについては、別エントリーでとりあげたいと思います。
では。