【本】ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール

ヴァンクライバーン 国際ピアノコンクール
吉原真里 2010/06

先日ご紹介した性愛英語の基礎知識の吉原教授の音楽コンクール・レポート。昔から、ピアノの名手とは聞いていたのですが、辻井さんの優勝を目撃するなんて、どれだけ強運なのかと驚いてしまいます。本書では、2009年5~6月にテキサス州フォート・ワースで開催された第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールの模様を余す所なく伝えいます。


浅田真央選手で久々にクラッシク音楽を聞いたような気がする私からすれば、29人のエリミ一人ひとりに的確にコメントする力にまずビックリ。加えて、アーティストや、審査員に臆することなくインタビューする吉原教授に2度ビックリ。こうした複眼的なアプローチにより、コンクールの素晴らしさ、厳しさを知ることができます。

素晴らしいのは、コンクールを支える地元の協力ですね。「1200人のボランティア」に象徴されますが、地元の財界は財政面でコンクールを支え、ホストファミリーは、コンクールの2ヶ月間、ピアニストを自宅に宿泊させて、ピアノの練習をする部屋を提供します。これが、アメリカの地方都市の素晴らしいところですね。たとえば、日本の長岡市から、世界的なピアニストが出たら、「XXホール」を造るのはイメージできますが、世界的なピアノコンクールを新設し、参加者を自宅に泊めるでしょうか。

そう思うと、「フォートワースでコンクールをやろう」と言い出した人も偉いですね。実際に世界有数のコンクールに成長するには、さまざまな人の努力があるのですが、中でもNPOのマネジメントが一流であることが印象に残ります。日本では、「金儲けなのか?」とまず批判が出そうです。

著者が、ドレスを着てパーティーに出て、魅力的な男性に出会い、連絡先を交換する下りを読むと、「ドット・コム・ラヴァーズを思い出して、ひとりでドキドキしてしまいますが、今回はそういう話はありません。また、写真が掲載されてるのも意外ですね。これまでの本は表すらなかったように記憶しています。やはり、右脳で書いているときには表現豊かになるんでしょうか…。

演奏を聴きたくなる一冊です。

では。


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