稲盛 和夫 日経ビジネス人文庫 2010/10
会計学は、ルカ・パチョーリ以来、欧州でできた感が拭えないのですが、日本独自の管理会計の手法として、改めて読み直しました。アメーバ経営とは、
大きな組織を独立採算で運営する小集団に分けて、その組織にリーダーを任命して、共同経営のような形で会社を経営する p.6
ことです。事業部制でもないですし、とても京都的な手法に感じます。今西錦司の棲み分け理論ですね。西欧的な管理会計が、移転価格を部門間のネゴーシエーション(交渉)によって決定します。アメーバ経営は、仏教的ですね。
この管理手法ができたのは、大企業病への対応。
中小企業と腫れ物は大きくなると潰れる p.27
3つの目的は、p.31
1. 市場に直結した部門別採算制度
2. 経営者意識を持つ人材の育成
3. 全員参加経営の実現
組織の分け方は、p.59。
1. 明確な収入が存在し、その収入を得るために要した費用を算出できること
2. ビジネスとして完結する単位であること
3. 会社の目的、方針を遂行できるように分割すること
営業部門を受注、納期管理、代金回収に分けるべきか?
アメーバ経営の特徴は、経済状況、市場、技術動向、競合他社などの急速な変化に対し、アメーバ組織を柔軟に組み替え、即座に対応できるところにある。p.64
例)物流事業部の独立
アメーバ組織をどう切り分けるかということこそ、アメーバ経営の始まりであり、終わりである。p.66
社内移転価格は、p.68
その商品をつくるのに必要な各工程で、だいたい同じぐらいの「時間あたり」が出せるように 決める。
最終的に判断を下す経営トップが、誰彼見ても納得できるようなフェアな値決めができなくてはならない。
営業と製造が対立しないように、営業はコミッション制。p.73
営業は、コミッション率が固定なので、安易に値引きして販売するようになる。
アメーバ経営は、フィロソフィをベースとしてはじめて、利害の対立を克服し、成城に機能することが可能になる。p.76
会計への倫理観は、p.77
嘘を言うな、人を騙すな、正直であれ。
この辺が、日本の外でどれぐらい通じるかですね。コストの10倍の価格から交渉を始めるのが当たり前と思っている文化で、何を「ウソ」と呼ぶか。
アメーバ別のPLに、労務費を入れません p.135。
「時間当たり」と呼んでいる指標を改善することに主眼を置いています。
仮に従業員一人当りの労務費が3000円の会社であれば、たとえば6000円以上といった、さらに高い「時間当り」を目標とすれば良い。
これを日次でやっているのですね。他部門を応援する場合も、
京セラでは、そのような振り替える時間も、0.5時間単位まで厳密にカウントしている。p.147
1対1対応の原則(p.150) とは、すべての取引に伝票を添付すること。
社内移転価格は、p.176。原価仕切価格は採用せず。市場価格をもとに営業・製造間で決められた社内売買価格を製造出し値としている。
時間当り採算制度では、在庫に対する社内金利を市中金利よりも高めに設定し、営業の経費として徴収 p.178
経費の認識には、現金方式を採用。「購入即経費」p.189 一部の承認には、稟議の承認を受けた上で、「使用高計上」を認めている。
間接共通費は、納得できる基準に従い、配賦。 p.192 間接部門はコストセンターで、配賦基準は以下のようなもの。
生産金額、出荷金額、人員割り、使用面積、受益頻度。
これも伝票を起票している。間接部門は、月初に今月発生する経費の予定を立て、各アメーバに連絡。
労務費については、リーダーには、平均時給を通達している。時間当りがそれを下回れば赤字ということ。
製造や営業の課単位以上の組織については、労務費を経費項目として含む損益計算書を作成し、税引き前利益を算出し、総合的な採算管理資料として活用している。p.195
ここまで作り込まないと、いけないと勉強になりますね。コンピューティングの値段が下がっているので、導入のハードルは下がっているとは思いますが。
既存のクラウド会計システムと連動するアドオンはニーズありそうです。
では。