バチカン

 ここを観てしまえば、他の教会に行かなくてもよくなる。教皇の権力を思い知る場所。ローマ・テルミニ駅から地下鉄で6駅行くと、そこは別の国。小学生の時、世界で一番小さな国と聞いた。といっても入国審査はない。コロナ陰性証明も不要。大聖堂に入る前の手荷物検査があるだけ。

 大聖堂は、これまで観てきた教会を上回るスケール。欧州の国王と張り合ってきた結果が、このような建物を生んだのだ。この建物が13億人の信者を生む原動力だったのは疑いようがない。ミケランジェロのピエタを始め、美術品も超一級なのだが、どうもしっくりこない。なぜなら、それはオーナーの審美眼というよりも、教会の権力に群がる者が献上したものだと思えたから。

 大聖堂には、いくつもの告解のブースが設けられ、数多くの言語に対応していた。ポーランド語までカバーしているのは、同国にカトリック信者が大きためだろう。増築を重ねられた美術館に収められる美術品の多さは、救いを求める献上人の多さと比例している。

 ここに来ると、オランダのクレラー・ミュラー美術館の素晴らしさがわかる。同館はオーナーの 審美眼によって名声を得た美術館だ。名もなき作品も、有名作品と同じ波動を感じることができる。