経産省の若手を留学させるなら、ルクセンブルグも良いのではないか。一人あたりGDPは$136千(2021年)と世界最高レベル。日本($39千)の3倍。岸田政権の所得倍増どころではない。
そんな日本も1989年に同国に並んだ時があった。
1980年には2倍の差があったのをバブルのピークで並んだものの、その後30年以上差が縮まることはなかった。
一部の超富裕層のせいかと思ったら、ジニ係数は0.32[1]でOECD42か国中24位。日本(0.33、16位)と格差は変わらない。ルクセンブルグの面積は2.5k㎡は神奈川県ほどの大きさ。人口は62万人(2020年)と島根県(67万人)ぐらい。日本と単純な比較はできない。周辺国から通勤する19万人が分母に入らない特殊要因もある。しかし、なぜ3倍?一人当たりGDPが1800万円という国がどうしても想像できない。
ネット情報によると、目利きが良かったということになる。もともとは鉄鋼業が盛んだった。次が金融業。1985年、EUが域内のファンド設定ルールを発表すると、他国に先駆けて国内法を制定。ルクセンブルグで作れば、欧州全域で販売できるようにした。今ではファンドの預かり拠点として4兆ユーロ(約500兆円)を運用し、ニューヨークに次いで世界第2位にまで成長している。
次が宇宙産業。1985年、政府が支援して衛星通信企業SES[2]を創業。同社は世界最大規模の衛星通信企業になった。
そしてIT。中でもデータマネージメント・ハブを目指した。セキュリティレベルの高いデータセンターを造り、通信インフラにも投資した。2008年には楽天が欧州本社を置いた。2010年にはスタートアップへの支援を開始。ルクセンブルクで創業するスタートアップ企業へのサポートを国籍関係なく実施している。IMDの世界競争力指数では13位。日本の31位を上回る。
しかし、この手のターゲティング政策は通産省のお家芸だった。成功しなかったという噂もあるが、令和になってにわかに所得倍増と目指すなら、ルクセンブルグからこの30年間を振り返るのも悪くない。
[1] https://www.globalnote.jp/post-12038.html
[2] Société Européenne des Satellites