企業研修で講師をすることがあり、日本企業についていろいろ思うところがあるのですが、宮脇咲良さんの話を聞いて、人事担当の方にも知ってほしいと思って書いています。
日系企業の海外現法のローカル社員と話をしていて最も強く感じるのは、これから伸びるのは日本の以外の地域ですし、そこでは言語、異文化の理解など、様々な能力が求められるということです。各社も同様に思っているから、私を雇ってくれているのですが、それは日本から猛者が次々に海外に行く状況にないということの裏返しでもありました。
そんな時に宮脇さんのHKT卒業の記事を読んで、「ああ、理想的なキャリアだな」と思いました。
第1に、若くして「実社会」に触れたこと。10歳で舞台デビューするのは芸能界ではよく聞く話ですが、一般人ではあまりないですよね。私の世代は、下手にバイトするよりは、受験頑張って良い会社に入った方が良いと言われました。
ただ、人生100年時代になり、生涯学習の環境が整うと、10代を勉強だけするのは時代に合わなくなりました。むしろ、早めにいろんな商売やボランティアに接して、アンテナを広げた方が、リスクの少ない人生なのではないかと思います。
第2に、10年ごとに自分をリセットできていること。10歳でライオンキングに応募したこと。20歳で韓国のオーディションを勝ち抜いたことは、大きな決断だと思います。彼女が17歳で単独センターを務めた「君はメロディー」はAKBのピークでした。その後、AKBは紅白を逃すことになりますが、20歳の決断がなければ、彼女に人生は別のものになったのは明らかです。
第3に、自分の性格をうまくコントロールしました。ラジオでの横山由依さんとの対談を聞くと、AKB時代は人見知りだったのがよくわかります。それが、あの大所帯を取りまとめる総監督と話をするうちに、マネジメントについて学び、コミュニケーションを変え、ついには韓国に渡り、またしてもガールズグループのリーダー格として活躍するまでになります。
30で初めて留学し、全然友達ができなかった私とは大違いです。歌とかダンスとかを一緒にやるのがいいんですかね。単に仕事や勉強だけでなく、スポーツなどをローカルスタッフと一緒にする重要性はあると思います。
生まれ変わったら誰になりたいかという質問に、韓国のメンバーは「自分」という。日本の女性なら謙譲の美学で先輩を挙げると思うのですが、良い意味での自己肯定感を学習していました。
第4が、若さを生かしたことです。オランダで2年も暮らしているのに、ひとつもオランダ語の話せないオジサンは痛感するのですが、ゼロから韓国語を勉強して、韓国のバラエティ番組で笑いを取るのは簡単ではないのです。異文化、外国語を学ぶのに若い時代が貴重な時なのを実感させてくれました。
第5が、23歳で結果を一回出したこと。彼女の卒業コンサートは、これまで学んだことの集大成でした。韓国で学んだプロデューサー視点を遺憾なく発揮してました。コロナ下なのにドームコンサートを実現しました。いまのHKTの実力だけでは開催が厳しかったと思います。現役メンバー全員に新たな衣装を作りました。オサレカンパニーの茅野しのぶさんとの会話を聞いていると、宮脇さんの衣装に対する深い理解(日韓の違いなど)や、デザイナーをその気にさせるカリスマ性を感じます。
セットリストの構成も巧みでした。AKBの他グループの歌とか、IZ*ONEの歌を入れるのは権利処理だけでも大変だと思うのですが、自分の意思どおりになってました。
会場にカメラ席も作っていましたね。韓国で学んだSNSの利用法をためらいもなく実現するのは簡単ではなかったはずです。
5000名の入場料では赤字だと思いますが、配信も入れれば黒字になったのではないでしょうか。あまたのオジサンミュージシャンがライブ中止に追い込まれる中で、輝ける戦績と言えないでしょうか。
採用担当者として、目の前にいる新人君たちと同じ年の彼女が、ここまで結果をだしているのを、感慨深く思う人は多いのではないでしょうか。
なんだか、50のオジサンがアイドルにヤラれているだけの文になってしまいましたが、コロナで海外渡航が止まってもグローバル人材の重要性は変わりません。ぜひ若手を海外に出して、鍛えていただきたいと思います。