コリン・パウエル 飛鳥新社 2017/6
IT WORKED FOR ME
In Life and Leadership
by Colin Powell
パウエル統合参謀本部議長のリーダー論。ひとつひとつのアドバイスが具体的で、苦労して昇進したのが伝わってくる良書。
13のルールは、こちらを参照。特異なルールはないですが、戦場で確認されたものだけに、重みが違います。前向きな言葉が多いのが印象的です。第12条は、
Don’t take counsel of your fears or naysayers.
F.D.ルーズベルトの言葉も印象的です。
the only thing we have to fear is…fear itself
First inauguration of Franklin D. Roosevelt (1933)
軍での体験が伝わってくるのは、トップの居場所。
「指揮官は戦場のどこにいるべきか?」
模範解答は次のとおり。
「影響力が大きくなるところで、判断がおこなわれるところの近く」 — 言い換えると、自分の存否が成否をわける場所である。
700人の兵士を従えて丘に攻めのぼる大隊指揮官というのは勇ましく、見る者に元気を与えるかもしれないが、その瞬間、その人物は生きのびようとあがくひとりの歩兵にすぎない。
p.95
企業経営者へのアドバイスは、p.96
リーダーの姿が見られる、その声が聞けるというのは部下にとって大事なので、経営幹部は工場の現場までこまめに足を運ぶべきである。ただし、長居をしてはならない。作業員や職長、ライン長が仕事に戻れないからだ。さっと役員フロアに戻り、必要なものが現場に届くようにしなければならない。
『史上最大の決断』でも、 アイゼンハワー 最高司令官が、危険を犯してでも現場に足を運び、兵士と率直に話をする姿勢が描かれていました。 「意思決定ポイント」はどこかを常に考える姿勢は参考になります。
p.98 では、マーシャル将軍が、ノルマンディー上陸作戦を現場で指揮することをあきらめる記述があります。
将軍なら、「偉大なる聖戦」の指揮を執りたいと思うのが当たり前だ。しかし結局、その任務は部下のアイゼンハワー将軍に任せた。
アメリカのMBAのクラスで、 マクレガーのX理論Y理論 を学んだ私は、アメリカでは性悪説も支持があるのだなと思いました。陸軍出身の著者がY理論なのを意外に思いました。
新しい組織に着任したら、信じてはならない確たる証拠がないかぎり、まずは、そこにいる人を信じるべきだと私は考えている。(中略)私は、新しい組織に着任するときトラブルを想定しないことにしている。前任のリーダーも優秀でできるかぎりのことをしたと信じて着任するのだ。
p.118
リーダーは、常に、チーム内に信頼関係を築くことを念頭に動かなければならない。(中略)そのような信頼は、他人を信頼する無私のリーダーからしか生まれない。
p.121
そういう著者も、情報機関からの報告を鵜呑みにして、イラク攻撃の演説をしてしまいます。情報収集のプロセス。
- わかっていることを言え
- わかってないことを言え
- その上で、どう考えるのかを言え
- この3つを常に区別しろ
結びは、「すべては人である」
Human experience shows that people, not organizations or management systems, get things done.