史上最大の決断—「ノルマンディー上陸作戦」を成功に導いた賢慮のリーダーシップ
野中 郁次郎 ダイヤモンド社 2014
人類史上最大規模の軍事作戦を通じたリーダーシップ論。
後半にまとめはありますが、大部分は戦闘の際に、リーダーがどう判断したかが描かれており、理論書というよりも、ケーススタディー集。途中で、半藤一利さんの本を読んでいるような気になります。
本書に描かれるのは、非常時のリーダーシップです。戦場は情報が限られます。軍人は混乱する中で、素早く決断しなければなりません。海外で多国籍のチームを率いることが増えた昨今、さまざまなことを学ぶことができます。
リーダーシップをフロネシス(実践知)に求めています。詳細は、こちら参照。歴史に学ぶ大切さは、本書の端々から伝わってきます。
組織論としては、ドイツの官僚組織と、連合国側のフラクタル組織。失敗の本質では、日本軍との比較がでてきますが、ドイツとアメリカの比較も興味深いものです。個人的には、直系家族+官僚組織は、トレンドが出ている時は、抜群の強さを発揮すると理解しました。
これまでは、チャーチルのリーダーシップに学んできましたが、本書ではアイゼンハワーの率直さに感心しました。危険を冒してでも、現場に足を運び、兵士と率直に話をする姿勢は、今の経営者にも学ぶところがあるのではないでしょうか。
男子ばかりの7人兄弟として育ち、母親には「溺れたくなければ泳ぎなさい」と厳しく育てられ、陸軍士官学校を卒業。野心家ではなかったにもかかわらず、3名の上司との出会いによって、人格を形成していきます。当時のアメリカには、(貧しい家庭に生まれても)人材を育てるシステムがあったことがわかりました。
話は脱線しますが、偶然や運が、リーダーシップに与える影響についても考えてしまいました。上陸作戦の日程と天候の話が出てきますが、タイミングを少し間違えていたら、悪天候で犠牲者が続出し、フランスへの上陸が失敗に終わったことも伝わってきます。リーダーの評価は結果に引きづられがちですので、運を引き寄せることも重要ですね。
では。