塩野七生 文春新書
月刊誌『文藝春秋』2013/11~2017/9までのコラム。海外にいると、こうしてまとめて読めるのはありがたいです。海外にいると、それまで見えなかった日本が見える時があり、塩野さんがその点を掬ってくれるのが、心地よかったです。
20年間もバンカーに入ったままの日本をグリーンに乗せるには、打つことしかない p.22
そうそう、前原さんも、小池さんも、打つには打ちました。
ギリシャ問題に取り組むドイツを評したのがp.125
徹底的に相手を打ちのめすのでは、勝ちはしても、その相手まで巻き込んでの新秩序づくりはできない。つまり、多民族から成る共同体のリーダーにはなれない。
企業経営にも通じるかと。フォルクスワーゲン問題を起こしたドイツとイタリア人の比較はp.135
なぜドイツ人は、落ちるとなると頭から落ちてしまうのかと。おそらくドイツ民族は、あらゆる面で優れた才能に恵まれていながら、落下には慣れていないのかも。反対にイタリア人は、慣れすぎである。落ちても足から落ちられるんだからと思っているので、落ちないで済むための配慮さえも怠ってしまう。
福島を廃炉技術のNo.1とすることを勧めるp.141。
「危機」(クライシス)という言葉を発明したのは、古代のギリシア人であった。だが、彼らは、この言葉に、もう一つの意味も込めた。それは、「蘇生」である。
Crisis (https://www.etymonline.com/word/crisis)
early 15c., from Latinized form of Greek krisis “turning point in a disease” (used as such by Hippocrates and Galen), literally “judgment, result of a trial, selection,” from krinein “to separate, decide, judge,” from PIE root *krei- “to sieve,” thus “discriminate, distinguish.”
50年間の歴史を書いてきた結論は、p.221。
自らの持てる力を活用できた国だけが勝ち残る。
政治の仕事は危機の克服 p.246。
人材が飢渇したから、国が衰退するのではない。人材は常におり、どこにもいる。ただ、停滞期に入ると、その人材を駆使するメカニズムが機能しなくなってくるのだ。p.248
政治と経済との違いは、
回復を目指すという目標は同じでも、前者はリストラしないでの回復を追求し、後者はリストラしてでも回復するのが一番、と考えているところにある。p.249
長期的に成功したのは前者とのことですが、日本はどうでしょうか。