【本】ローマ人の物語 17-20

悪名高き皇帝たち

塩野七生 新潮文庫 2005

初代皇帝アウグストゥスの後に続いた4皇帝を描いたシリーズ。
2代目はティベリウスアウグストゥス直系でなく、中継ぎ目されており、本人もそのように振る舞った。緊縮財政。軍拡停止。真面目で自らの神格化は拒否。元老院とは協調するが、馴れ合いは拒否。隠遁後もカプリから帝国を統治し続けた。

皮肉にも、真面目に統治をしたおかげで、蛮族からの侵略や、飢饉などがおこらなかったのだが、皮肉にもそれが、皇帝の評価を下げてしまう。

人間は、常に「ニュース」を求める。「大事」に関心をもつ必要がなければ、「小事」に関心を持ってしまうのだ。19 p.71

ティベリウスは77歳まで生きた。ローマ帝国は、

カエサルが企画し、アウグストゥスが構築し、ティベリウスが盤石にした p.89

第3代はカリグラ。若き皇帝は、「神になる」ことを望み、暗殺されてしまう。

興味深かったのは、「ギリシア人とユダヤ人」19- p.182。2千年前から争っている様子がよくわかる。

ギリジア人は、何もない土地に新しく都市を建設し、そこを基地にして、手工業や通商業によって富を築くのである。反対にユダヤ人は、すでに存在し繁栄している都市に移り住み、手工業や通商業や金融業に従事して富を築くのであった。18-p.183

ティベリウスは、ユダヤ民族の特殊性を十分に理解していたのに対し、カリグラはそうではなかった。

神の法にしか従わない人々と、人間の法によって律しようと努める人々と、どうやれば共存は可能か。18-p.185

法律に対する考えの違いは、18-p.162

ユダヤ人にとっての「法」とは、モーゼの十戒のように、神が与えたものを人間が守るのが法なのである。(中略)

一方、ローマ人の考える「法」とは、人間が考え、それを法律にするかどうかも、元老院や市民集会という場で人間が決めるものなのだ。ゆえに、現実に適合しなくなれば、改めるのに不都合はまったくない。