ヒトは「いじめ」をやめられない
中野 信子 小学館新書 2017/9
脳科学者によるいじめの対処法。脳科学の研究でわかってきた知見の一つは、
社会的排除は、人間という生存種が、生存率を高めるために、進化の過程で身につけた「機能」なのではないか p.13
人間は共同体を作るという戦略に頼って生き延びてきた生物種です。p.28
社会的集団にとって最も脅威になるものは何か。それは、内部から集団そのものを破壊してしまう「フリーライダー」の存在です。p.22
このタダ乗りしかねない人を見抜く機能を「裏切り者検出モジュール」、そして、制裁行動を「サンクション」と言います。p.23
第2章で説明されるのがオキシトシン。これは、子供を産み、守ることを目的に分泌されるホルモンです。
オキシトシンが仲間意識を高めすぎてしまうと、「妬み」や「排外感情」も同時に高めてしまうという、負の側面も持った物質であることもわかっています。p.33
可愛さ余って憎さ百倍。仲の良い集団ほど、いじめを誘発してしまうのですね。このオーバーサンクションを起こす「裏切り者検出モジュール」にかかわる脳内物質がセロトニン。p.47
セロトニンが多いと安心するようになります。セロトニンを再利用するタンパク質が、セロトニントランスポーター。この多寡は遺伝子に依存します。多く作ろうとするのがL型。少ないのがS型。
29カ国中日本はS型が最も多いという結果になりました。日本はS型遺伝子の割合が80%を超えており、しかも、80%を超えるのは日本だけだったのです。p.51
日本人は遺伝的に心配性なんですね。
本来、合理的でない制裁を行うのは、サンクションによって快感が得られるため。p.56
人間の脳は、その理性的なブレーキを上回るほど、攻撃することによる「快感」を感じるようヒトはプログラムされている p.57
いじめが深刻になるのは、小学校高学年から中学校2年生にかけて。p.80 テストステロンの分泌が増え、攻撃性が高まるのが一因とか。情動のブレーキ機能である前頭前野が成熟するのは30歳前後。p.85
男女差については、p.92。女性はグループを作り、男性は派閥を作る。
男性の集団やグループは、女性と違い、”派閥”を作るなど、ヒエラルキーを前提としていることが多い。p.93
第4章は、回避策。女性が女性から妬みを受けないためには、若さや女性らしさを前面に出さない。自虐ネタを繰り出すアンダードッグ効果。
互いに傷つけ合わない“60%の仲”など。とても現実的で実践的でした。
では。