【本】なぜローカル経済から日本は甦るのか

なぜローカル経済から日本は甦るのか (PHP新書)

冨山和彦 PHP新書 2014/6

GとLの世界の本。ネットで話題になっている本は、実物を読む前に大量のインプットがあるため、初見であるにもかかわらず、既視感がありました。シンガポールにいても、そうなるのが、時代を感じます。

GDPや企業の売上が緩やかに減っているのに、なぜ人手が足りないのか。なぜ、ワタミがこれほど苦戦しているのか。フレームワークが、お見事なので、日本がかかえる様々な問題が、見えてきます。

グローバル化が進めば進むほど、かえってグローバル経済圏から切り離される人が増えるというのは、学生時代に読んだマルクスを思い起こさせます。

先日、日本からいらっしゃった金融機関の方と、本書について話をしました。シンガポールは、Lを無視して、Gに特化した国です。そこに最近進出しようとしているのは、日本のLな会社です。なので、本来は、「ジャパン」としてブランディングしなければ戦えない土俵なはずなのに、県ごと、というか「藩」ごとに話をしようとする。地元の市場が伸び悩んでいる時にL企業が外に目を向けるのは、正しい判断です。一番大変で時間がかかるけど、重要なのが人材の「L→G変換」です。しかし、ほとんどの企業は、買収、提携などのニュースになりやすい奇襲攻撃に流れがちです。

最近の傾向は、「LL支援」です。Lな人が、L企業の海外進出を支援しています。たとえば、県庁の方は、典型的なLな方だと思うのですが、地元企業の海外進出をリードすべきでしょうか。明日から、シンガポールの省庁に転勤になって、初日からバリバリ働けるとは思いません。地銀の多くも、駐在員事務所しか置いていません。自分がフルバンキングできていないのに、どうやって取引先の海外進出を促進できるのか。そもそも、支援する側の人がG人材になるのに、時間がかかります。

一方、興味深いのは、こういうことが起こっているのが、日本だけではないこと。他の国も多かれ少なかれ、「GLギャップ」が顕在化し、L企業の成長が課題になってきていることです。

と、考えて頭をよぎるのが、IBM-世銀スワップ。これと同じ仕組みで「LLスワップ」ができないか。つまり、L企業はあくまで自国でのサービスに専念する。お互に商品を供給しあい、自社商品として販売・アフターサービスを提供する。ま、販売代理店と同じという気もするのですが、これまでの右肩上がりを想定しないところが違いになります。これまでは、代理店から直接輸出、現法設立という、LからGへの転換を前提とした契約でしたが、このスワップに参加する企業は、Gを目指しません。

日本の地銀か、信金がこうした仲介ができれば、面白いと思いました。

 

では。

【参考】
著者インタビュー(経済界)
ローカル経済成長のカギは「労働生産性」の向上