イスラム教の論理
飯山 陽 新潮新書 2018/2
イスラム思想研究者による、イスラム法典の解説書。イスラム国を始めとする、過激派の行動を、コーラン等を引用しながら、教義に照らして解釈してくれます。さすが、砂漠の一神教。他の宗教に対して、妥協することがないのはよくわかりました。
気づいていなかったことのひとつは、イスラム教徒Googleの話 p.54。
一般のイスラム教徒の識字率上昇に加え、規範テキストがデータ化されてオープンになり、誰でもアクセスできるようになった今、情報は独占から解き放たれてオープンになり、どんなイスラム教徒も自ら典拠を示しイスラム教について持論を展開する自由を得たのです。
グーテンベルグが、聖書回帰をもたらしたように、Googleがコーラン回帰をもたらしているのです。
経典には、異教徒は抹殺すべき対象であること、ジハードは最高の倫理的振る舞いであることが明示されています。18億のイスラム教徒はどこへ行くのでしょうか。より経典に近づいていくのか。それとも、所得が上がれば世俗化が進み、柔軟になっていくのか。今世紀の大きなイシューのひとつですね。
イスラム教徒の数は2010年の16億人から2050年までに27.6億人に増える見通し。この時点で約90億人と予想される世界の人口のうち、約3割をイスラム教徒が占めることになります。この期間のキリスト教徒の信者数は、21.7億人から29.2億人。今世紀のどこかで、イスラム教徒がキリスト教徒を追い越すことでしょう。
家族類型的に言えば、共同体家族(権威主義+分配の平等)の国の勢いが増しています。中国、ロシア、インド、ベトナム、イスラム教の国々。戦後の日本は、アメリカの絶対核家族的な価値観を「グローバル・スタンダード」として学んできましたが、今世紀に入ってそれが変わったのは間違いありません。このイスラムの論理を学ぶことは、東南アジアで仕事をするにも、とても大切なことです。