JTのM&A 新貝 康司 日経BP社 2015/6
日本たばこ産業のCFOによるクロスボーダーM&A入門書。なんでクロスボーダーM&Aで成功しているのが専売公社なのか。多くの日本企業が国際化に苦労する中で、マルドメだった企業が、グローバル企業に脱皮するヒントがありました。何度も買収を繰り返すことで、ノウハウが社内に蓄積されていたのですね。Post Merger Integration計画を自社スタッフだけで作るのは、なかなかできないことです。
買収の要諦は、以下の3点。
- 買収の目的を明確にする
- 目的に沿った対象を買収する
- PMI計画を作成し、定量化されたシナジー効果以内の価格で買収する
企業買収では、決して9回2アウトからの起死回生の一打ではあり得ない、というのは重たい言葉です。統合における10の基本原則は、p.146
- One company – one management
- Fair and equal treatment of all employees, irrespective of company of origin
- Speed in decision making is critical – 80/20 rule
- Keep it simple
- Plan delivery is our #1 priority
- Strictly minimize disruptions to existing business
- Capture synergies in a disciplined and systematic manner
- Separate organization for integration management but all excom members accountable to deliver results
- In-house management
- Integration plans will be finalized in the first 100 days after closing
私なりにポイントを整理すると、 第1は、謙虚であったこと。海外人材が社内にいないと認識し、買収先の人材に海外事業の経営を委ねました。JTIの人材は以下の通り。
- 役員:10カ国から17人(日本人は2人)
- 従業員:100カ国から27000人(日本人は180人、0.7%)
第2は、業務分掌と職務権限を明確にしたこと。ウチの会社にもあると思うでしょうが、職務明細書(Job description)は、日本よりはるかに精緻です。権限移譲も、直系家族の文化を認識しないと、詰めきれません。日本は30代の息子が5度目の逮捕となっても、親の責任を問う文化です。お上の責任を常に問う文化は、結局、箸の上げ下げを普段指導することになりかねません。ここを明示できるかどうか。
第3が中期的な視点。買収したRJR、ギャラハーともに株主の期待に応えるあまり投資がおろそかになっていました。 JTは将来への投資をすることにコミットして、社員の信頼を勝ち得たのですね。
では。