野沢 直子 文藝春秋2017/10
私の著者に対する記憶は、『夢で逢えたら』で始まって終わっていたが、当時の活躍を裏切らないバック・グラウンドストーリー。
この年代の家族のひとつのキーワードが「一発当てる」 なかにし礼のニシン漁で当てるとか、バリエーションはいろいろあれど、戦争という強烈な体験が、国民をフツウではいられないステージに持っていっていたのを感じる。貧しさから脱出するには、フツウではいられなかった時代を感じる最後の世代かもしれない。
物語は、居場所を探しつづける父と、したたかな女性たちということになるのだが、こんなハチャメチャな脚本を笑いに変える彼女の文才に感服する。
男性作家では、父親を擁護できなかったと思うし、女流作家ではどこかロマンティックな話を入れたくなるのでは?女芸人という立ち位置が、登場人物全員にツッコミを入れながら、2時間の舞台に収めるという離れ業を成し遂げさせている。
そう、悲劇と喜劇はワンセット。
面白かったです。