東芝の悲劇
大鹿 靖明 幻冬舎 2017/9
同じタイトルの本を、三鬼 陽之助氏が、1966年に出版している。半世紀を超えて繰り返されるWの悲劇。直系家族的な組織がトップの選択を間違えると、どのようになるのか、勉強になりました。3.11という環境変化はあったものの、
その凋落と崩壊は、ただただ、歴代トップに人材を得なかっただけであった。p.5
という著者の主張に同意せざるを得ません。
日経の大西康之氏による『東芝解体』が、同社の下部構造を中心に描いたとすれば、本書は人を通した物語になっています。
4代に渡る社長をその生い立ちから描く取材力は圧巻です。歴代トップの経歴を並べてみると、社長を輩出する学校教育、社員教育の大切さがわかります。西室氏は武蔵学園でリベラルな教育を受けています。慶大で全塾自治会の委員長になり、学生健康保険を作っています。西田氏は、東大大学院で哲学を学んでいます。
社内のキャリアについても、これだけの大企業で、複数の事業部に精通するのは、難しいでしょう。東電もそうでしたが、原子力の専門家になるには、数年というわけにはいきません。
昇進についても、考えさせられます。実績を残さなければ、昇進につながらないのですが、決算操作にまで手を染める役員に組織は、どう対処すべきなのか。
指名委員会の無力さも描かれており、悩みが深いです。
引続き、検討ということで。