塩野 七生 新潮文庫 2002/7
ポエニ戦争終盤。カルタゴが滅亡(紀元前146年)するの巻。改めて印象的なのは、ハンニバルへの対応を議論する元老院。30歳のスキピオは、70歳のファビウスに対して堂々と論戦を挑んでいます。p.18
常在戦場の時代には、戦争に勝つことが優先され、年功序列では乗り切れなかったのですね。紀元前から、議論が優先されているのは、日本の直系家族的な秩序とは対照的です。日本なら、臣下が激論しても、お館様が結論を下すパターンではないでしょうか。
そんなスキピオも、最後は裁判にかけられてしまいます。p.136
他者よりも優れた業績を成し遂げたり有力な地位に昇った人で、嫉妬から無縁で過ごせた者はいない。(中略)嫉妬は隠れて機会をうかがう。機会は、相手に少しでも弱点が見えたときだ。スキャンダルは、絶対に強者を襲わないからである。
日本人に既視感があるのは、経済運営に優れたが、政治感覚で劣ったカルタゴの使節が、ローマ元老院でのやりとり。p.180
「われわれカルタゴ人は、あなた方ローマ人とともに、3人の王と闘った。マケドニア王フィリップスにシリア王アンティオコス、マケドニア王ペルセウスの3人である」
元老院はこれを聴いて、嘲笑で爆発しそうになった。議席の一角から、野次がとんだ。
「血も流さずにいて、何を言う!」
現在のアフリカのイメージは、難民船に乗ってイタリアを目指す姿ですが、紀元前に、670年に渡ってアフリカ大陸に君臨した国があったのですね。そんな国でも、自国を守る気概を失ってしまうと、滅びてしまう。学ぶところが大きいですね。
テルマエ・ロマエが、日本人の役者でできるなら、ローマ人の物語も大河ドラマになりうるでしょうか。