ハーバード流 逆転のリーダーシップ
Collective Genius
The Art and Practice of leading Innovation (2014)
リンダ・A・ヒル(Linda A.Hill) 日本経済新聞出版社 2015/4
画期的なアイディアを生み出すために、リーダーは何をすべきなのか考えるという、ありそうでなかった本。
どこへ向かうのかわからない創造的な活動においては、一般に考えられている優れたリーダーシップが通用せず、リーダーは「羊飼い」になるべきという。
イノベーションとは、個人の努力を個人の努力以上のものにする「チームスポーツ」だと言える。筆者たちの言葉を使うなら、本当に創造的なグループは、たえず各メンバーの「天才の一片」を引き出して、ひとつにまとめ、「集合天才(Collective Genius)」にすることができる。p.4
そうした組織に共通していた機能は、p.26。
- コラボレーション
- 発見型の学習
- 統合的な決定
一見、どこの会社でもやっていそうなステップですが、個別の事例を読んでいくと、実に繊細な配慮がなされているのがわかります。たとえば、コラボレーションの中で起こる意見の対立。革新的な企業は、この対立を奨励しています。たとえば、ピクサーズの毎日のミーティングp.44。
アニメーションの動きを批評し合うのですが、自ら熱演して変更を主張したアニメーターは、結局、却下されにもかかわらず、その後も積極的に議論に加わっていました。日本の会社だと、事前に根回して、確実に承認してもらうようにする。あるいは、却下されたらしばらく大人しくしているのではないでしょうか。アイディアが却下されたことは、その人の人格を否定することには全くならないのがよく伝わりました。
エンドロールに、製作に携わった全員の名前が記されるのはその結果なのです。
リーダーシップを改め、組織も見直した例として、インドのHCLを取り上げています。ナイアーCEOの言葉は、p.93
リーダーはあらゆる質問に答えようとしたり、あらゆる問題に解決策を示したりしおうとする気持ちを抑えなくてはなりません。むしろ、自分のほうから尋ねるべきです。
チェンナイでSIMカードを買おうとして1日無駄にした私にしてみれば、インドでこういう顧客志向の会社がでてきているのが驚きです。
読後感ですが、やはり、国による文化の違いをどのように対応するのが気になりました。本書に日本企業がないのは、偶然ではないのだと思います。ソニーの盛田さんがウォークマンを作れと指示したのは、トップダウンでしたね。直系家族な組織は、こういうパターンがハマったら強いです。日本に、羊飼い、そもそもあんまりいませんしね(笑)。
同じ会社の中でも、革新的でなくていい部署もあります。部門間異動を前提とする日本企業で、切り分けはできるのかなど。
宿題にします。
では。