村上 世彰 文藝春秋 2017/6
村上さんの、投資論。金融を学んだことのある人には、オーソドックスな話に聞こえるのではないでしょうか。世の中がやっと落ち着いてきたと言うべきでしょうかね。
たとえば、ROEの改善 p.202
上場企業がROEの向上を考えるには、バイアウト・ファンドなどが企業を買収するケースを思い浮かべるとわかりやすい。平均的にみて、買収金額の4分の1がエクイティ、4分の3は借り入れとなっている。借入の中には劣後債を入れるケースも多く、リスクに応じて金利も変わる。リターンを求めて企業を買収するプロたちが、どのように資金調達するのかを見れば、どのようなバランスシートの状態が最も資本効率を上げるのかがおのずとわかる。
資本を小さくし、金利負担を考慮しながら負債の比率を上げ、レバレッジを効かせた状態で利益を上げていくことで、資本効率は高くなる。ちなみに一般的な企業買収で、エクイティ:劣後債:一般借入が1:1:2程度だった場合、IRRは20%:8~10%:2~5%程度となる。
コーポレート・ファイナンスのみごとな要約。
他にも、投資家だった父親がどのように息子に投資を教えたのも興味深い。サラリーマンの父親は、息子に、社内の処世術を教えるのだろうか。
もう一つは、投資家と経営者の違い。著者が経営者に向いていないと決定打になった通産省時代のAPEC事務局での調整。
私は自分が「意味がない」と思うことをやり続けることがもともと苦手だから、こうした日々は非常に辛かった。p.54
最近の関心事については、投資の失敗例についても、率直に書いてあり、参考になりました。
では。