岩本 仁 かんき出版 2012/9
英国海兵隊員だったダミアン・マッキーニー氏の組織論を紹介した本。
軍隊では、部下は上官のコントロールどおりに動くだけだとよくいわれる。しかし、事実はまったく逆だ。私の軍隊人生において、上官にこと細かに管理されたことはほとんどないし、管理したこともない。むしろ、ビジネスの世界のほうが、上司が部下をコントロールしたがる傾向が強い。p.13
軍隊が、中央集権型から権限委譲型に移行したのは、環境が変わったからでした。
第二次世界大戦以降、先進国同士の戦争は一度もありません。
それに代わって世界中で起こっているのは、主として対ゲリラ戦や対テロリスト戦です。対テロ戦では、敵の規模、潜伏場所、武器の種類などは何もわかりません。そもそも敵は民間人に紛れ込んでいるため、誰が敵なのかもわかりません。
そのように予測不能な敵と戦うためには、伝統的な軍隊のマネジメント手法である中央集権・絶対服従のやり方はまったく機能しません。p.17
権限委譲型のマネジメント手法の源流は、1806年のプロシア。p.65 ナポレオンに負けた敗因分析から、
プロシア軍は司令本部が出す命令を確実に遂行する能力には長けていたものの、刻々と変化する予測不能な状況にはうまく対応できなかった p.66
と総括します。行動規範は、以下のように変えられました。
上官は細かい命令を下すのではなく、広い視野をもった指示を明瞭でわかりやすい言葉を使って与えること、下士官は「何をどのようになるか」という命令に基づく行動ではなく、「何をなぜやるのか」というミッションに基づく行動をとり、あらかじめ決められた成約の範囲内でなら、自らの判断で自由に行動できる p.66
ASPIREモデルは、次の通り。
- Aim
- Situation
- Plan
- Inspire
- Reinforce
- Evaluate
本論からはそれますが、『坂の上の雲』の正岡子規の言葉(P.223)が、印象に残りました。
つまりは、運用じゃ。英国の軍艦を買い、ドイツの大砲を買おうとも、その運用が日本人の手でおこなわれ、その運用によって勝てば、その勝利はぜんぶ日本人のものじゃ。
では。