飛躍への挑戦 東海道新幹線から超電導リニアへ
葛西敬之 ワック 2017/3
JR東海会長による高速鉄道近代史。
さて、質問です。新幹線の遅延は、1個列車あたり何分だったでしょうか。正解は、0.2分(平成27年度)。p.3
東京から博多まで毎日運行する高速列車の「遅延」がこの数値。この正確さをもたらす源泉が、
単純で統一された企画がもたらす、汎用性、互換性p.2
であることが説明されてゆきます。
ただ、第1部は、国鉄時代。鉄道という産業が、労務対策であったことがよくわかりました。
第2部は、民営化。今の日本政府は、膨大な債務を抱えていますが、かつての国鉄もそうだったなぁと感慨に浸りました。
第3部以降は、新幹線・リニア整備には、政治が避けられないというお話。このあたりは、高速鉄道の海外展開でも同じだと思いました。
以下、感想です。
昨年ぐらいまでは、国際競争力があるのは日本食ともてはやされていましたが、これからは鉄道だと思いました。これだけの経験と技術蓄積は、一朝一夕にできるものではないのがよくわかります。ただ、読み進めるにつれて、なんだか、陸軍の兵器の進歩の話を読んでいるような錯覚に陥りました。とても、日本の組織文化に結びついた産業なんだろうと思います。自社の企業文化を客体化し、海外へのカスタマイズをどこまで許容するかが大変なのだろうと伝わってきます。
本書の趣旨と外れるのでしょうけど、鉄道会社が取り組む街づくり(百貨店、遊園地)の話がまったく出てこず、ただただ、高速鉄道の話で1冊語り切るのは、頼もしくもあり、やはり、技術の会社なのだと思うところであります。
では。