佐藤貞一
陸前高田で種屋を経営する佐藤さんの震災手記。
http://www.lets-talk.or.jp/activity/talk-for-recovery/teiichi-sato/
先日見学した英語音読会で佐藤さんに会いしました。自分の経営する店舗は、津波で流されてしまいました。被災体験を語ることは辛いことですし、この年齢になれば、外国語学習が難しくなるものです。しかし、佐藤さんは音読会に通い、英語で270ページの本を出版しました。(中国語、スペイン語版もあり)
まず、驚いたのは、震災前後の記憶は、いまだに鮮明で、書ききれないほどあふれていることです。『息の跡』として映画化もされたこの作品を、佐藤さんは、自分で音読して残そうとしていました。
次に興味深かったのは、佐藤さんが、(英語で)読むのが辛いと言ったことです。ここにコトバとココロの微妙な関係をみた気がしました。佐藤さんが記述を始めた時、外国語であるがゆえに、自分の気持ちから距離を置いて書くことができていました。日本語で「愛している」と言うのは恥ずかしくても、「サランヘヨ」とはあっさり言えるのに似ているでしょうか。日本語で記載するには辛くても、英語であれば、淡々と記載できたのかもしれません。
しかし、佐藤さんが、音読を重ねるうちに、自分の書いたことをココロのレベルで理解できるようになり、読むのがツラくなっていたのです。コトバの学習において、音読がいかに有効かわかるエピソードではないでしょうか。
震災から6年を経てもなお、情熱を持って音読に取り組む姿に、私も英語習得を志した時の初心を思い出しました。
参考
http://www.lets-talk.or.jp/activity/talk-for-recovery/teiichi-sato/