佐藤優 文春文庫 2011/6
交渉のハウツー本ではなく、著者の交渉経験の紹介。日ロ外交について、膨大なエピソードが語られていっます。12月のロシア大統領訪日を控え、日ロ関係をを考えるための良書。
まずは情報収集。
インテリジェンスの専門家は、対象国や民族の神話、就航経典、義務教育で使用される歴史、国語の教科書には必ず目を通す。P.30
広義の交渉術は3つ。
- 交渉しないための交渉術
- 暴力で相手を押さえつける交渉術
- 取引による交渉術
情報を相手に与えるときには、様々なパターンがあります。エリツィン大統領の場合。
一番最初に情報を入れて、頭作りをするのと、会談がはじまる直前に耳打ちして情報をいれるのが効果があるわね。それから、非公式な雑談で聞いた話が結構、頭に残るようよ。P.331
交渉の奥義を感じるのが、ブルブルリス氏との対話。
ロシアで北方領土問題を解決することができるのは大統領だけだ。それならば、日本側はエリツィンの人物研究を徹底的に行わなくてはならない。P.406
エリツィン大統領は、駆け引き型の交渉を嫌うのに、日本側が駆け引き型の条件を提示していしまいました。
何の見返りを求めず、相手の懐に入ることによって、自己の利益を極大化するのが交渉の弁証法だ。P.410
白眉は、
ほんとうの取り引きとは、取り引きということを相手に悟らせずに行うものだ。P.411