【本】国家の罠 ☆☆☆☆☆

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて
国家の罠
佐藤 優 2005/3 新潮社

 外務省の元主任分析官、佐藤優氏の手記。2002年の鈴木宗男疑惑で逮捕された顛末と自分のスタンスを克明に綴っています。
 いつの時代も、物事の本質を見極めるということは、難しいものですが、2002年の事件に対する私の理解がどれほど浅はかであったか、思い知らされました。


 筆者のインテリジェンスの高さについては、様々なところでかかれていますので省略しますが、圧倒的に面白い本です。
 ポイントは、P.292以下の歴史認識だと思います。

 その結果、現在の日本では、内政におけるケインズ型公平分配路線からハイエク型傾斜配分路線への転換、外交における地政学的国際協調主義から拝外主義的ナショナリズムへの転換という二つの線で「時代のけじめ」をつける必要があり、その線が交錯するところに鈴木宗男氏がいるので、どうも国策捜査の対象になったのではないかという構図が見えてきた。

 民主党が、小沢党首をたてて、新たな戦略を模索している今、この対抗軸をどこへ向けるのか。改めて、私たちに問われているのだと思います。
 一方、看守とのやりとりは、人間の本質について考えさせられます。同じ小菅にやってくる人であっても、その態度は、ひとり一人違うものなのですね。こういう特殊な状況下で、人間の本質が浮き彫りになるのは、実に興味深いことです。
 ライブドア事件についても、自分が本質を見抜いているか考え直したくなりました。

では。

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