日経新聞社 2015/10
いま起こっているものではなく、2015年の中国株価下落を描いた本。金融市場だけでなく、工場や、小売市場の様子がよくわかります。タイトルもそうですが、バブル崩壊という文脈で読んでしまいがちですが、ヴォーゲル教授の「鄧小平」を読んだ後なので、やや冷静に読むことができます。
昨年からの株式市場に対する介入も、
われわれ西洋人は、相手が、悪いことをすると罰する。悪いことをしなかったら、罰しない、という考え方です。
いっぽう、鄧小平と共産党のロジックは、相手が、悪いことをしそうになったら、その前に罰する。p.207
を思い出すと、妙に納得しますね。
さて、本書で、印象的だったのは、楼継偉財政相のコメント。
今後5~10年の間に(中国が)中所得国の罠に陥る可能性はとても大きい。私は五分五分だとさえ思うp.60
この危機感も適切ながら、対策の認識も的確でした。
- 農業改革
- 戸籍改革
- 労使関係改革
- 土地制度改革
- 社会保険制度改革
生産現場の変調としては、シチズンの工場閉鎖 p78 が印象的でした。私が広東省東莞を訪れたのは2005年。ちょうど、田舎から波のように労働者が広東省にやってきていた時でした。ひとつの時代が終わりましたね。
というわけで、悲観情報満載ですが、私の見方は、まだ変わりません。30年も景気後退なしで成長してきた方が異常で、いまは調整期。不良債権や腐敗の問題は深刻ですが、ほかの東南アジアの都市に比べると、経営能力の差は歴然。しぶとく、やりくりするのではないかと。
では。
参考
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO94387790V21C15A1BE0P01/