【本】低欲望社会

低欲望社会 「大志なき時代」の新・国富論

大前研一 小学館 2015/4

大前研一さんの日本再生論。『新・国富論』>から30年。日本社会の変化を理解できます。

『21世紀の資本論』については、功績を評価しつつも、日本への理解が浅いことを指摘。たとえば、富の独占率(所得上位10%人口の資産が総資産に占める割合)を引用しています。p.23。

日本は、世界的に見て富の再配分が最もうまくできている国の一つである。累進課税によって、イギリスと同じようにどんどん社会主義国化したからで、前出のクレディ・スイスの報告によれば、富の再分配が最も進んでいる国はベルギー(47%)で、、第2位が日本(49%)だ。

累進課税の所得再配分機能は評価しつつも、日本の税制の歪みについて議論。これは従来の主張と変わりません。

日本の最大の問題は、人口減少(p.48)と見定め、移民受け入れを含めた対策を議論しています。

第2章では、現政権の経済政策を検証しています。経営コンサルタントらしいと思ったのは、「優れたトップは一つのことだけを言う」p.106ということ。個別の政策批判は、いちいちごもっとも。モラトリアム法を始めとする金融機関への批判はp.127から。

 預金者にはまともな金利を払わず、融資先企業をすべて延命させ、キャッシュを持ちながら景気刺激になるような投資もできない…。日本の銀行は、もはや銀行としての仕事を何もしていないということである。p.129

地方再生もバッサリ。

なぜなら、私はアメリカのUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)で「地域国家論」の講座を担当していて世界各国の事例を調査・研究しているが、世界中どこでも20世紀以降の課題はアーバニゼーション(都市化)であり、地方が創生した例はないからだ。p.143

むしろ、東京の再開発を主張。その後も、各論について議論が続きますが、結論は、

20世紀の企業にとって成功の鍵は「人、モノ、カネ」であった。今は、モノもカネも溢れていて、特許などもカネ次第で使わせてもらえる。そんな21世紀における事業成功の鍵は、「人、人、人」である。それも「尖った人間」が何人いるかが重要になっている。p.284

というわけで、私も精進したいと思います。