【本】物流の視点からみたASEAN市場

物流の視点からみたASEAN市場
~東南アジアの経済発展と物流~

森 隆行 カナリア・コミュニケーションズ 2015/5

流通科学大学教授による東南アジア物流分析。「物流を制するものが市場を制する」という主張に共感しました。ASEANの物流状況がコンパクトにまとめられていて大変な労作です。

興味深いのは、タイで産業物流から商業物流への変化が起こっている点。

タイの物流は、日系の自動車物流、欧州系の商業物流という構図ができていた。しかし、その構図に変化の兆しが見えてきている。日本の小売や外食産業の進出が相次いでいるからだ。p.42

これまで欧州物流企業が優勢だった市場に、日本の小売・飲食業の進出で変化が起こっているのが印象的です。日本食ブームが、東南アジアの物流まで変えているのですね。トヨタからイオンです。

以下、私の感想です。兵站は後回しで精神力で前進するのは、帝国陸軍からの伝統。いまだに同じ轍を踏む日本企業が跡を絶ちませんが、この本を参考に議論をすれば、ASEANの物流戦略がイメージできると思います。

そもそも、東南アジアは、地域としての物流を語れる状況にありませんでした。私がビルマを旅行した1995年は、南北に走る鉄道はあったものの、東西の移動手段がなく、キャベツを載せたトラックの荷台で移動しておりました。それが、20年の年月を経て高速道路の整備が進み、次は、新幹線の整備が動き出そうとしています。ようやく地域としてASEANの物流を語れるようになってきました。