【本】すべての経済はバブルに通じる

すべての経済はバブルに通じる (光文社新書 363) (光文社新書 363)すべての経済はバブルに通じる

小幡績 光文社新書 363 2008/8 

ネット株の心理学の著者による最新作。今回の恐慌を行動経済学の視点からスッキリ整理できます。『まぐれ』とならぶ今年の良書ですね。

証券化の本質は、リスクを変質させたことだとしています。

この資産の本質的なリスクは、資産が生み出すキャッシュフローが確実に得られるかどうかというリスクから、この「商品」が将来売りたいときに売れるかどうか、という流動性リスクに変質した。p.51

サブプライム・ショックの本質とは、リスクテイク・バブルの崩壊だとしています。リスクテイクバブルとは、

多くの投資家がリスクを求めてリスク資産に殺到し、それによりリスクがリスクでなくなり、結果的に彼らすべてが儲かることになり、さらにほかの投資家も含めてリスクへと殺到する状況(p.60)

しかし、そんなことは、金融のプロであれば、見抜けるはずと思うのですが、金融のプロであるからこそ、このバブルにハマりました。現代は、資本と頭脳が分離しており、資金の出してと運用者が別主体になっています。強烈に運用利回りの競争をしている運用者は、バブルをバブルだと思って静観している間に、ライバルに運用利回りで負け、投資家から資金を引き上げられてしまう。「王様は裸だ」と言っても報われない状況下にあるのです。

投資のプロであればあるほどバブルを探し歩き、あるいは、自分でバブルを作り、そして膨らませて、そのバブルに最大限乗ろうとするのである。(p.211)

バブル崩壊の影響として、最終章で、キャンサー・キャピタリズムについて、述べています。

自己増殖を止めない金融資本は、投資機会を自ら作り出すことを求める。その成功により、金融資本はさらに増殖するが、実態経済には過度の負担がかかり、金融資本振り回されることになる。ここに、本来、実態経済の発展を支える存在であった金融資本が、自己増殖のために実態経済を利用するという主客逆転が起きる。

もう一度、マルクスを読み直す時期ですね。

では。

 

【参考】

週刊ダイヤモンド 2008/9/27 p.97 池田信夫さんの書評