田原 総一朗 朝日新聞出版 2009/8
田原さんの日本政治分析。政権交代の背景を知るには、必読だと思います。
まずは、戦後日本政治を3区分します。
①吉田茂 戦後復興
②田中角栄 利益分配
③バブル崩壊後 負担分配
時代は③を求めているのに、自民党は②を続けた。②の正体は「面倒を見ること」 もっとも議員の面倒を見たものが総裁になり、総理になる。(p.22) 田中角栄首相は、高級官僚の個人情報をすべて記憶し、一日600件の陳情を捌きました。
負担分配の時代には、ビジョンを語る力と痛みを分け合うコミュニケーション・スキルが試されます。新政権も、八ツ場ダム、基地問題、JALなど、早速負担分配の問題に直面しています。こういう状況を解決するのが、現代の政治家の仕事なんですね。
ところが、日本人は自分の頭で考えることが、あまり得意でない。宮澤さんの話が秀逸です。
押し付けられた服に体をあわせるのが、日本人はとてもうまい。戦前、軍人は軍服に体を合わせるものだといわれましたよ。(中略)ところがね、問題は、日本人は服を自分で作るのが、あまり上手ではないことです。p.33
民主党と自民党との違いは、次の3点。p.34
- 官僚との癒着がない
- カネに比較的きれい
- 世襲政治家が少ない
これが、日本人の限界を破るリーダーシップを発揮するか…。
田中総理のパートは、なかなか読ませます。p.88では、テレビ業界での仕事ぶりが活写されています。何をやったかがこれほど具体的に思い出せる政治家も少ないですね。p.97以下の六法全書を暗記していた話も、初めて聞きました。
田中総理の民主主義の定義が面白いです。
民主主義とは何か。羊羹がある。これを人数分に切って皆で分ける。そのとき、いちばん大きいひと切れを一番弱い者にやる。これが民主主義だ。p.90
こうして戦後政治を振り返り「大アジア時代」が来たとするのですが、個人的にはピンときません。
日本人は、韓国、中国よりも、北欧、ミネソタの気質が近いと思うのですが…。
では。
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