Capital in the Twenty-First Century by Thomas Piketty The Belknap Press
本編だけで577ページもあり、とても読めませんが、経営者の視点からも重要な論点を含むと思うので、メモです。
議論の出発点は、p.24 のFigure 1.1 Income inequality in the United States, 1910-2010. アメリカでは、所得の上位10%がGDPに占める比率が、1930年台並みに上昇しています。
最も印象深かった式は、 r > g
The principal destabilizing force has to do with the fact that the private rate of return on capital, r, can be significantly higher for long periods of time than the rate of growht of income and output, g. p.571
資本収益率(r)が、経済成長率(g)を長期では上回ると分析しています。(たとえば p.354 Figure 10.9)) 戦後の一時期を除き、資本収益率は経済成長率を上回っています。gの増加は、国民全体の所得を増やしますが、rの増加は資産家の所得を増やします。
P.302に所得階層別の収入源シェア(アメリカ)が載ってます。最上位だと70%が資本からの所得。先日の鳩山議員の所得のニュースを思い出しました。
不動産業界の方ならば、Figure 4.6 Capital in the United States, 1770-2010に興味を持たれるのではないでしょうか。18世紀から俯瞰すれば、農地が持っていた価値が減り、都市化にともない住宅地、あるいはその他の資本に価値が移っていくのがよくわかります。
企業の世界展開のからみでは、p.462 Figure 12.5 The distribution of corld capital, 1870-2100が、3つの意味で印象深いです。
第1は、private capital (% world income)が下がるのは、戦争によるものであるのがハッキリわかります。
第2は、 同%が、今後600%を越えること。これまでのピークは1910年の500%でした。
第3は、アジアの占める比率が半分になること。資金の出処は欧米のファンドかもしれませんが、国別にみれば、このように予測されていること。
マクロの数値が、個別企業に当てはまるわけではないですが、仮にそうだとすれば、経営者は、世界展開をどうすすめていくべきか。
PLだけでなくBSで、しかもアジアへ投資をすべきということになるのかなと。20年前に、アセットを持たずに手数料収入を増やせと言われていたのとは真逆。しかも、行き先は、ロンドン、ニューヨークではなく、アジアにっていると。
難解ではありますが、とても参考になる本でした。