【本】日本文明世界最強の秘密

日本文明世界最強の秘密

増田 悦佐 PHP研究所 2008/2/
高度経済成長は復活できる」の著者による文明論。日本は、効率的な鉄道網建設に成功したため、生産性が高く、他の先進国が追従するのも難しいのだそうです。それで世界最強か?は、さておき、エネルギー価格が高騰している現在、社会インフラとしての鉄道を見直す良い機会ではないでしょうか。

P.107に、「主要国のエネルギー消費量1,000tあたりGDP産出高」が紹介されています。日本が14千ドルでトップ。2位はイギリスで10千ドル。アメリカは6千ドル。この原動力が鉄道だと述べています。

P.113には、「年間1人あたりの鉄道移動距離」が掲載されてます。日本は2,989km。2位のフランス1215kmの倍以上になっています。これが東京圏だと7,500kmなんですね。毎日乗っているので、違和感はないのですが、世界から見ると、まれにみる鉄道好きであることがわかります。

しかし、鉄道自体がエネルギー効率の高い交通機関であるわけではありません。

鉄道車両は自動車に比べると車両の重量がはるかに大きいので、乗車人数が少なければ乗用車より輸送量あたりのCO2排出量が多くなる。通常の鉄道で1車両あたり10人前後、路面電車で5~6人程度になると、乗用車との効率が逆転する。p.115

東京のように人口密度が高いところでフル回転することで、効率のよさが発揮できるわけです。東京の旅客交通鉄道依存度は50%に対して、ロンドンが5~6%。NYが1%。なので、ロンドンは地下鉄初乗りが1000円で赤字。東京メトロは160円で黒字となっています。

こうした差が出たのは、鉄道に対する考え方に差があったからで、日本では「鉄道網」として効率が重視されたのに対して、他の先進国では、頭端駅に象徴されるように、鉄道が有機的につながらなかった。開発がほとんど完成した地域でこれをやり直すのは、非常に難しいのだそうです。アジアは、これから都市化が進むため、効率的な鉄道網ができる可能性が残されています。

第二次大戦直後には17%に過ぎなかったアジアの都市人口比率は、2005年に40%に達したが、2030年には55%程度に高まると予想されている p.108


選挙が近づき、格差の議論が復活してくると思いますが、成長エンジンとしての都市。地方交通のあり方について、新鮮なデータを提供している本でありました。

では。