稲盛和夫の実学 経営と会計
オリジナルは、1998年。
稲盛会長による管理会計の本。現場に戻って、会社経営に携わりますと、管理会計の重要性に改めてて気づきます。多民族な社員に納得してもらえる会計制度は何か。本書は、「実学」でありました。
真剣に経営に取り組もうとするなら、経営に関する数字は、すべていかなる操作も加えられない経営の実態をあらわす唯一の真実を示すものでなければならない。(中略)なぜなら、これらの数字は、飛行機の操縦席にあるコックピットのメーターの数値に匹敵するものであり、経営者をして目標にまで正しく到達させるためのインジケーターの役割を果たさなくてはならないからである。(まえがき)
最初にハっとさせられるのは、こちら。
会計上常識とされている考え方や慣行をすぐに当てはめるのではなく、改めて何が本質であるのかを問い、会計の原理原則に立ち戻って判断しなければならない。
違う国で、決算監査を受けると、それぞれの国の会計ルールに自分を当てはめようと必死になりますが、これが本来あるべき姿ですね。減価償却期間の話が出てきますが、身につまされます。
新しく参入してくる企業が、売上に対して販売費・一般管理費が15%かかるという常識を前提にして経営すると、意図せず自然のうちに同業他社と横並びの経営担ってしまう。これでは、「自社の製品をより効率的に販売するためには、一体どのような販売組織や販売方法をとるべきなのか」という重要な経営課題を根本的に考える機会を自ら放棄し、他社を模倣することになる。
以下、メモ。
1. 値決め経営
値決めはたんに売るため、注文を取るためという営業だけの問題ではなく、経営の死命を決する問題である。売り手にも買い手にも満足を与える値でなければならず、最終的には経営者が判断すべき、大変重要な仕事なのである。
「(中略)お客さまが納得し、喜んで買ってくれる最大限の値段。それよりも低かったらいくらでも注文は取れるが、それ以上高ければ注文が逃げるというギリギリの一点で注文を取るようにしなければならない」
2. キャッシュベースの経営
利益ではなく、現金を見て経営する。
3. 資産か費用か
収益と費用が、お金の動きから切り離されていくことによって近代的な洗練された会計手法が発達したわけだが、経営はあくまで原点のキャッシュベースで考えるべきである。
資産か費用かは、政府が決めるのではなく、経営者が決める。
4. 自己資金での経営
松下幸之助氏の、ダム式経営を、「土俵の真ん中で相撲を取る」と表現。
安全に経営をしようと思えば、減価償却プラス税引後利益で返せる範囲のお金でしか設備投資をしてはならないことになる。
5.棚卸
経営者自ら実施し、価値の無いものは処分する。
6.予算制度
要る金はその都度決裁。
7.完璧主義を貫く
8.ダブルチェック
出来心があっても、不正ができない仕組みを作る
というわけで、会計ひとつとっても、奥が深いとおもうのでした。