長銀裁判で須田副頭取を担当した弁護士の手記。単に裁判の論点を浮き彫りにするだけでなく、日本の行政、司法、金融システムの欠陥についても、考えさせる内容になっています。
裁判については、複数の本を読んできましたが、初めて知る事実もいくつかありました。初めて須田副頭取に面会したときに預かった家族への伝言。p.103
長男に…… 長野の義父が大変心配していると思う。”大変申し訳ない”と電話せよ。
次男に…… 親は親。子は子。私の問題とは関わりなく(結婚の)スケジュールを進めよ。
婚約者の父も理解してくれるはず。
妻に……元気だ。ご近所から”マスコミがうるさい”と苦情がきていないか。薬局のパートをちゃんと続けること。
検察だけでなく、栽培書の問題点も指摘しています。たとえば、「取立不能見込額の算定基準を示すルール」をめぐる議論。
あろうことか、A裁判長は、弁護人の説明要求に対して沈黙する検察官に代わって、「それはMOF一般基準ということですね」と引き取って弁護側の説明要求を封じてしまった。
最高裁の弁論の言葉が印象に残ります。p.187
金融・経済・会計の重要問題は、市場とその参加者、会計の専門家、行政など、すべての関係者による透明でタブーのない自由な議論によって決せられるべきものであり、刑罰権の過剰かつ恣意的な発動によってこの自由主義的プロセスを傷つけてはならない。
p.202では国策調査の問題点に触れています。
もう一つの重要な禍根がある。それは長銀の経営者たちから「失敗の真実を語ることにより経営責任を果たす機会」を奪ったということである。
結びは、 Mark Rowlandsの言葉でした。
The most important you is not the one that rides its luck; it is the you that remains when its luck has run out. The most important you is not the one who delights in its cunning but what is left behind when this cunning leaves you for dead. The Philosopher and the Wolf