【本】The Alliance


The Alliance: Managing Talent in the Networked Age

by Reid Hoffman,  Harvard Business Review Press 2014

LinkedInの創業者による人事制度・社会論。私がLinkedInに登録は、2005年。「会社の壁」が決定的に変わると感じたことを覚えています。それから10年。SNSは社会のインフラとして定着し、採用する側とされる側が、直接結びつく時代になりました。

先日ご紹介した、『クリエイティブ資本論』が都市論という切り口だったのに対して、本書は人事から見た社会考察と言えると思います。時代の変化が早まり、終身雇用が維持できなくなると、雇用が流動化します。失われた従業員の忠誠心に代わるものとして、”Alliance”を提唱しています。

The business world needs a new employment framework that facilitates mutual trus, mutual invenstment, and mutual benefit. p.7

GE、ディズニー、ピクサー、アマゾンなどの豊富な事例も紹介されており、参考になります。

Disney の例は、p.15より

Lasseter began his career at Dsney as a young animation designer in the days when animation was created with pen and paper, then conveterd into film. One day, a colleague showed him a video from a local conference about the emerging technology of computer-generated animation. Lasseterwas struc by avision — Disney should create an entire film using computer-generated animation. He went to managers and pitched the idea. They listened carefully to his pitch, then sent him back to his desk. A few minutes later, he received a phone call from the head of Disney’s animation department — informing hiim that he was being fired.

John Alan Lasseter は、ピクサーに移り、トイ・ストーリーを作ります。

Disney realized it had made a mistake by rejecting computer animation and ended up bringing Lasster back. But it would cost them — the Walt Disney Company spent over $7 bilion to buy Pixar.

会社という枠にとらわれずに人材を活用する方法についても、具体的に提言されており、こうした新しい施策についても取り組んでいく必要はあると思います。

しかし、『クリエイティブ資本論』同様、アジアで人事制度を改善していくにあたっては、国あるいは企業の文化を分析した上で、本書を冷静に受け止める必要があると思っています。

ひとつは、本書の分析・提言は、絶体核家族な社会にフィットしているということ。MBA留学時の99年、オペレーションのクラスでの議論を未だに思い出します。なぜ、日本の企業にしか、Just In Time ができなかったかといえば、その一つの理由に直系家族的な濃密なコミュニケーションを他の国が真似できなかったことがあったと思います。終身雇用。同期の絆。独身寮から社宅まで、仕事以外の情報まで取り込んだ組織が、すり合わせを実現してました。それを、ITが解消してしまいました。個人の生活を確保しながら、Gmail, FB, YouTubeを使えば、高度な情報共有ができるようになった。直系家族のように「滅私」しなくても対抗できる。転職を繰り返しながら、「弱いつながり」を維持しつつ新たなサービスを生み出せるようになりました。

一方、追いつかれた直系家族陣営にとって、転職は、それほど割り切れるものではありません。私自身、転職を何度か経験しているにもかかわらず、いざ、シンガポール企業の人事を担当すると、リテンションに対して、保守的な見方をしてしまっていました。

もう一つは、職種によっても差があること。私の見聞きしたシンガポール企業の例でいえば、営業職は、本書のようなAlliance を理解できると思いますが、現業は、保守的、あるいは、無関心なのではないかと思います。

ひとつの会社に2つのカルチャーがある場合、特に、経営資源が限られている中小企業では、教育投資の有効性について、迷うのが現実ではないでしょうか。アジアでの適用例のケースが積み上がっていくと、また面白い議論につながると思います。

では。