【本】国家債務危機

国家債務危機
“Tous ruinés dans dix ans?” by Jacques Attali
作品社 (2011/1)

経済学者が国家債務問題を書くと、『国家は破綻する』のように500ページになります。大統領補佐官が書くと、半分の本書になります。

割いている分量からいえば、国家債務危機の歴史書です。

(スペインの)主権債務は対GDP3分の2に達していたという。フェリペ2世の治下、大航海時代の「太陽の沈まぬ帝国」は、計4回にもわたってデフォルトに陥ったのである。p.65

さまざまな国のデフォルトが紹介され、p.74では、Adam Smithの引用。

When national debts have once been accumulated to a certain degree, there is scarce, I believe, a single instance of their having been fairly and completely paid. The liberation of the public revenue, if it has even been brought about at all, has always been brought about by a bankruptcy; sometimes by an avowed one, but always by a real one, though frequently by a pretended payment. ( An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations)

モンテスキューは、公的債務に厳しい見方をしています。

(しかし、公的債務は)実際に経済・産業に従事する人々から奪った所得を、有閑階級に移し替える。つまり、ほとんど働かない人々を優遇し、働く人々を冷遇することになるのである。p.83  ”De l’Esprit des Lois ” Charles-Louis de Secondat, baron de La Brède et de Montesquieu

にも関わらず、現在、世界は、史上最大の過剰債務に脅かされているという現状認識。

2007年、裕福と思われていた地域は、貧しいと思われていた地域から、借金をしていることが明らかになったのである。p.32

p.33では、中国の例が示されていますが、歴史を振り返れば、

新たに巨大勢力を持つようになった国が登場すると、その国は、世界的覇権国に取って代わる前に、彼らに資金を貸し付け p.118

てきたことがわかります。
第5章では12の教訓が示されます。#11は、過剰債務に陥った国のほとんどは、最終的にデフォルトする。
第10勝では、8つの戦略が示されています。増税、歳出削減、経済成長、低金利、インフレ、戦争、外資導入、デフォルト。
改めて、日本語版序文を読むと、

対GDP比で200%にも達した日本の公的債務は、先進国において最も深刻である。(中略)このままでは、日本国内の貯蓄はすべて、公的債務をファイナンスするために利用されざるを得なくなることから、産業やイノベーションのために投入できる財源は不足するであろう。p.2

との指摘。
さて、我々に残された道とはなんでしょうか。

では。