This time is different
Carmen M.Reinhart & Kenneth S.Rogoff 日経BP社 2011/3
”There is nothing new except what is forgotten”- Rose Bertin p.394
この言葉を痛感する大著。66カ国、800年におよぶ世界の金融危機を分析。金融危機も財政危機もありふれた現象で、多くのケースに驚くほど共通点があることがわかります。
タイトルの和訳は?ですが、日本政府を見ていると、洒落にならない気もしております。
1942年には、日本はその長い歴史の中で唯一の対外債務デフォルトを起こしたし、戦後インフレの際には、日本のインフレ率は最高で568%に達した。
と、まず、自分が「忘れている」ことに気づきます。また、「失われた10年」は、日本特有の事象のように思えますが、さにあらず。
民間の借り入れの大幅増と資産価格の急上昇に続いてマクロ経済の破綻と政府債務の急拡大が起こるのは、どれもきわめて典型的な症状である。p.v
日本は、「典型的な症状」でありながら、今回の債務問題は”This time is different.” なのか。
p.131の図5.3を見ると、銀行危機、公的対外債務危機がありふれた光景なのがわかります。たしかに、低所得国で発生しやすいのですが、
実際には銀行危機の発生率は、高・中・低所得国いずれでもさして変わらないことがわかった。p.222
とあります。
金融危機のの主な前兆は以下のとおり(p.319)。
- 資産価格の顕著な上昇
- 実質経済活動の停滞
- 巨額の経常赤字
- 債務の継続的な拡大
深刻な金融危機の特徴は、以下の3点。
- 資産市場が大幅に落ち込み(なかなか回復しない)
住宅価格は6年に渡って平均35%、株価は約3年半に渡って平均56%落ち込む - 生産と雇用の落ち込み
失業率は平均7%上昇し、この水準が4年以上続く
生産高は平均9%以上落ち込むが、低迷は平均して2年程度 - 政府債務の実質価格が急増する
平均86%増加。
銀行危機がもたらす最大の負の遺産は、まずもって公的債務の拡大だと言ってよかろう。それは、大規模な銀行救済策に要する直接コストをはるかに上回る。p.260
大恐慌では、回復に時間がかかったことにも触れています(p.342あたり)。「輸出主導の回復」ができないことが原因のひとつ。
インフレについてはこちら。
対外債務デフォルト発生年のインフレ率は平均的に高く、33%である。ところが国内債務デフォルトの中のインフレの加速ぶりは甚だしく、発生年の平均インフレ率は170%だった。しかもデフォルト後数年にわたり、100%以上に高止まりしている。p.209
アメリカ経済の現状や、日本経済に何が必要なのかがよくわかります。