【本】無宗教こそ日本人の宗教である

無宗教こそ日本人の宗教である
島田 裕巳 角川グループパブリッシング  2009/1

平成宗教20年史をご紹介しました。平成のキーワードを「宗教」と喝破した島田さんは、「無宗教」という宗教観について議論を深めています。

日本には「宗教」という言葉が無かった。そんな文章にハっとします。

宗教ということばが入ってくる前は、仏教という表現もあまり使われていなかった。(中略)実際、仏教は、「仏法」「仏道」と呼ばれ、一つの法なり、道なりとされていた。p.44

非常に長い時間をかけて宗教観を形成した日本では、複数の考え方がブレンドされ、複数形としての宗教が認識されてこなかったんですね。本書では、さまざまな宗教を比較することで、日本が浮き彫りになってきます。

西洋では天国が空の上にあるのに対し、日本は山にある。

日本全国には、冬の間山にいる山の神が春には里に下ってきて、稲作を守護する田の神になり、秋になって収穫が終わると、その田の神はまた山に戻って山の神になるという言い伝えがある。p.72

日本人は、神よりも「こころ」を重要と思うという例として、ホラー映画が紹介されています。p.87 エクソシストやオーメンが、悪霊に取り付かれた人間。それに対して、日本は、お岩さん、リング、らせんも個人の恨みから他人を祟る。そのほかにも

  • 仏教とキリスト教の共通点: 出家。p.130
  • キリスト教とイスラム教の決定的な違いは、ムハマンドは人間であるのに対し、キリストは神の性格も持っていること。p.112
  • 民間から皇室に嫁いだふたりの女性は、ともにミッション・スクールの出身者だった。p.128
  • イスラム教のあり方は神道にもっとも近い。 P.140

こうした宗教の理解は、ビジネスにも役立ちます。

  • アメリカには、打ち合わせやミーティングはあっても、会議はない。

上意下達が徹底しているアメリカでは、メンバーの「こころ」をひとつにするための会議という必要がないという考察でした。

国家の衰退と宗教の隆盛についても触れています。グローバル化によって国境の意味が薄れ、大きな政府が財政負担で国民の期待にこたえられなくなると、小さな政府を目指す。格差が広がり低所得層が増えたとき、彼らを救うのが宗教なのだと。

国衰宗盛

とでもいいますかね。北朝鮮に当てはめて考えると、面白いなと思いました。

では。

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