ヒトラーの大衆扇動術
許 成準 彩図社 2010/7
群集心理の本。ローマ帝国以来、大衆を動かすには何が必要か考えることができます。ヒトラーはクーデターで政権を奪取したのではありません。民主主義の手続きを踏んで最高権力に上り詰めたわけですが、その緻密な技術をわかりやすく解説しています。
印象に残る分析はたとえば、
- 人を洗脳するには時間と場所を選ぶ
- 扇動するパワーは怒りが最大
- 共通の敵を作る
- 役者のように自己イメージを作る
近視であるのにメガネをかけて撮った写真はほとんどないp.195 - 実践の前に大口を叩け
などなど。
ヒトラーの演説の特徴は「神秘的な登場」、「分かりやすい内容」、そして「群集を興奮させる熱狂的なスピーチ」に要約できる。p.12
p.195には、マキャベリ「君主論」の引用も。
君主は、実際に善良である必要はないが、善良な人に見えるということが重要だ。
そして、大衆を達観するこんな引用。
大衆の受容能力は非常に限られており、理解力は小さいが、そのかわり忘却力は大きい。この事実からすべて効果的な宣伝は、重点をうんと制限して、そしてこれをスローガンのように利用し、その言葉によって、目的としてものが最後の一人にまで思い浮かべることができるように継続的に行わなければならない。p.208
読み返すと、現代のことかと思いますね。p.236以降にまとめがあります。
- 具体的なビジョンを作る
- ホラを吹く
- 自分に催眠をかける
- 自分だけのスタイルを作る
- 鏡を見ながら練習する
- 芸術的な感受性を育てる
- 生活を淡白にする
- 手段を制限しない
- 利害関係を利用する
- 組織の主導権を握る(任務型戦術)
- No.2の登用
- 実践する
悪魔的な利用法だけに終わるのではなく、ヒトラーの批判もしています。
- 高圧的な経営スタイル
- 排他的なシステム
K-1が日本の他民族登用例として取り上げられています。
家族類型の視点からいえば、同じ直系家族のドイツを直系家族の韓国人が分析し、直系家族の日本で売れているということですね。
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