カイシャ維新
冨山 和彦 朝日新聞出版 2010/8
元産業再生機構COOによる資本主義論。「出羽の守」を排し、現場で使える考え方をまとめています。官か民かといった単純な議論ではなく、ガバナンスをどう効かせるかを考えぬいています。
コーポレートガバナンスの定義は、「いざというときに、企業の持続的反映の障害となっている経営陣のクビをすげ替えること、あるいはそのきっかけを作るための実効的な仕組み、権力作用メカニズム」と明確にすべきである。p.106
という考えの下、著書のこれまでのキャリアから様々な教訓が導かれています。
企業再生家としては、知識労働者の重要性に言及。
会社は株主のモノだ!と敵対的買収社が叫んでみても、この手の会社を相手には空しい遠吼えに過ぎないのだ。ドラッカーは、「知識集約産業における従業員は、いわゆる労働者ではなくボランティアだと考えるべきだ」といっている。p.58
スタンフォードOBということでは、
日本版シリコンバレーを作るなんて100年かかっても無理。p.157
と直言。政府主導のエクイティーファンド整備を提言p.182。その条件は、
- キャピタリストにふさわしいミッション、ガバナンス構造及びインセンティブ構造を実現すること
- ふさわしい人材を実力本位で集めること
- 組織運営を徹底的にプロフェッショナル型にする
テクニカルに面白かったのは、産業再生機構での議論。
- 非効率なナッシュ均衡状態から民間プレヤーが抜け出すなくなっているときに何が必要か
- 企業がらみの不良債権問題における情報の非対称性をいかに解決するか(資産査定コスト、シグナリング)
- クラウディングアウト・リスクの最小化
リーダーシップの話で面白かったのは、「テストを白紙で出す人」。腹にドスンと響きます。
最後はやっぱり自助自立。p.224
一身独立して、一国独立する
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