【本】ドット・コム・ラヴァーズ

ドット・コム・ラヴァーズ―ネットで出会うアメリカの女と男 (中公新書 (1954))ドット・コム・ラヴァーズ―ネットで出会うアメリカの女と男

吉原 真里 中公新書 (1954)  2008/06

ハワイ大学教授による、現代アメリカ人論。Barbara Ehrenreichは、低賃金の職場で働くことで、アメリカのワーキングプアを描きました”(Nickel and Dimed“)。本書は、世界最大の恋愛マッチングサイト、match.comで実際にデートすることで、アメリカ人の深層心理に迫っています。

アメリカ人を描くのは、難しいことです。もとをたどれば、ほとんどヨソから来た人たちですし、それをヒトククリで説明できるはずもありません。しかし、彼らには何らかの共通点があり、それゆえに、相違点も際立ってくる。そんなもどかしさを解く鍵が実は、恋愛サイトだったんですね。恋愛サイトでの行動にアメリカ人らしさがよくでていました。

アメリカ産SNSに登録するときに戸惑うのは、まず、実名表記であること。次に、自分自身について語る欄がヤタら多く、埋めるだけでも苦労します。自分をハッキリ表現できないと、認識すらしてもらえない社会。そんなところで、パートナーを能動的に選ぶとなると、高度なコミュニケーション能力が求められます。たとえば、政治信条や宗教でフィルタにかけるということも、日本ではないでしょうね。

マッチング・サイトには、年齢が高い方も、参加しているんですね。そこまでして、相手を探さなければならない背景には、パートナー社会のプレッシャーがあります。それほど努力してパートナーを探したのに、どうして離婚率は高いのか….。

読んでいる途中で、アフガニスタンのバーミヤンに行ったことを思い出しました。敬虔なイスラム教徒の少女は、一定の年齢になると、外出する際に顔をベールで覆ってしまいます。結婚するのは、親のマッチング。バーミヤンの女性が、”Prisoner of Religion” だとすれば、アメリカ人は、”Prisoner of Freedom”  選択肢が多いゆえに、悩みも深い。

これまでの著者の本は、主に左脳で書かれたものでした。文字だけで、MECEに論点を語りつくす才能には、いつも感心していました。今回は、ピアノを再開したせいか、とっても右脳な仕上がりで、著者の新たな一面をみせてくれています。ただ、彼女の文書力で、パーソナルなことを、しかも日本語で書かれると、日本人男性は、満腹になってしまうかもしれません。

また、アラフォーど真ん中という切り口で見れば、緒方先生と吉原先生のライフスタイル比較は、興味深い結果となりそうですね。

では。

【参考】

・ドットコム・ラヴァーズのサイト
http://mariyoshihara.blogspot.com/

・日経 2008/8/3(日) p.21 に書評が掲載されていました。

・週刊ダイヤモンド 2008/8/23 p.94 で若田部教授が書評を書いていました。

・新潮45 2009/1号 p.214 「魅力的な相手をネットで」が掲載されています。