中内 功 生涯を流通革命に献げた男 (中内功シリーズ)
中内潤・御厨貴 編著 千倉書房 2009/9
ダイエー創業者のインタビューに、流通業界関係者のインタビューを合わせて出版された本。
ダイエー本は、あまたありますが、創業者最後の声を聞ける本書は、非常に価値があります。経営者の言葉には、本当に重みがありますね。会話を起こした「だけ」のものなのですが、学ぶところが多くあります。小売業だけでなく、多くの企業経営者に読んでいただきたい本です。
中内さんといえば、徹底した現場主義者で、当時の西友の堤さんと対比されています。
面白いエピソードも、満載なのですが、たとえば、p.340のセブンイレブン。ヨーカ堂に話が行く前にダイエーに行くのですが、
「一店舗につき一日30万から40万で、年商1億円ぐらいだ」と言う。「それでは100店つくっても100億円やないか。たいした売り上げにならん」
と断ってしまうんですね。私は、逆に、当時の勢いを感じます。
意外だったのは、毛沢東の影響。
それは、毛沢東の『実践論・矛盾論』です。矛盾は実践でしか解決できない。その考え方は毛沢東理論ですわ。p.320
中内さんは、大学に行ってないのですが、大変な勉強家であったのが、インタビューを通じて伝わってきます。
インタビューは、体調の関係で途中で終わっています。ダイエーが経営難に陥る箇所はないのですが、現在を見通すようなコメントもあります。
コンビにというのは、直営でやる仕事ではなしに、フランチャイズでやる仕事なんですね。(中略)電気製品というのは、一台売っていくらという歩合制でやる仕事であって、社員が月給をもらってやる仕事ではないわけです。p.361
ヨーカ堂の伊藤さんのインタビューでは、当時、メーカーがなかなか商品を売ってくれなかったことを批判してこんなコメントがありました。
メーカーさんといおうのはちょっと女性的で、乱売されるのもいやだし、シェアはとりたいし、ブランドの問題も考えるというところがありますね。小売サイドはちょっと男性的で、なんでも突っ走るという傾向が一つあったんじゃないでしょうか。p.374
まさに、この男性的な大将が中内さんだったわけですね。
では。
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