誰から取り、誰に与えるか
井堀利宏 東洋経済 2009/7
東洋経済の2009上半期経済書BEST20、第10位。政権交代で、所得再分配が盛んに議論されていますが、焦点は、タイトルのとおり、「誰から取り、誰に与えるか」です。本書では、再分配に関するデータを検証することで、初心者でも問題の所在を確認できます。
本書の問題意識は、
どのような格差が問題なのだろうか。また、格差が本当に拡大しているのだろうか。かりにそうだとして、それをどこまで是正すべきか、さらに、格差を是正する場合、再分配政策はどこまで有効なのか、
ということです。これを地域間、世代間、個人間の格差について検証し、再分配がどれほどの効果を挙げているのか検証した上で、対策も提示しています。
まず、日本の平均的な再分配所得は、下図のとおり。
給付額の方が大きく、差額が財政赤字となって将来世代に先送りされています。p.60
地域別格差は、それほど大きくなく、再分配によって調整されています。
図録▽地域間の所得再分配の状況
新政権は、個人間格差を埋める福祉政策や地域間格差を埋める地方への補助金を増やす傾向にありますが、実際の格差は、それほど悪化していないですね。
日本の最大の格差は世代間格差。これは、先日紹介した、『だまされないための年金・医療・介護入門』でも指摘されていました。
やはり、正確なデータ収集が政策立案の基本ですね。納税番号もなく、正確な負担補足もままらない現状が一番問題なのかもしれません。
では。