オランダの医療制度

 オランダの医療制度は、費用を抑える仕組みであります。

 私は、オランダに来て、すぐにドアに指をぶつけてしまい、翌日には腫れ上がってしまいました。しかし、私は、医者に会うことができませんでした。まず、医療保険に入れていませんでした。日本には国民健康保険がありますし、シンガポールも値段に文句を言わないなら、比較的カンタンに医療保険を買うことができました。

 ところが、オランダでは医療保険加入は義務なのですが、社会保険銀行(Sociale Verzekeringsbank、SVB)の審査に時間がかかりました。そのOKをもらってから民間の保険を買うわけですが、オランダというメンバーシップを得るための壁はまず感じます。

 保険は諦めて、病院を探しました。整形外科医に行くわけにはいきません。かかりつけ医制度に従い、自分のホームドクターを決めなければいけません。自分で調べて、良さそうな病院を見つけても、完全予約制。電話すると、自動応答装置。オランダ語なので番号を選択することもできず、ギブアップ。ここまでくるのに数日かかり、指の腫れは引いていました。

 ここまできて、日本で病院に行く時に、タイムチャージの意識がなかったことに気づきました。博士課程まで進んだ人の時給は、最も高いはず。弁護士同様、時間を無駄にすることは許されないはずです。しかし、日本だと、アポ無しで受付に行けば、20分ぐらい診てもらって、薬をくれる。数千円だけの負担で。そういうことが、オランダでよくわかりました。

 オランダの医者は、バケーションに行きます。そのときは、近くの医者にバトンタッチ。その間に怪我した患者は、いつもとは違う先生に診てもらいます。診察してもらえたとしても、「様子を見てみましょう」と言われることが多いとか。日本と違い、自己治癒を基本に置いているので、薬なしで治ると診察されれば、薬が出ません。

 一方、乳がん検診や子宮頸がんワクチンの案内が市から来るなど、予防にはしっかりお金をかけてます。医療の水準は欧州トップレベル。

 大人の保険料は、シンガポールより高かったですが、子供が無料なので、家族でみれば、同じぐらい。これで、医療費がGDPの1割なのであれば、合格点ではないでしょうか。(日本は11.1%)。

 コロナで、その強靭さもわかりました。オランダの人口あたりの感染者数は、日本の20倍 (2021/4/4までの累計値)ですが、医療崩壊を起こしませんでした。かかりつけ医制度が、大病院への集中を防ぎ、普段から自己治癒をトレーニングされている人たちが、病院への負担を最小限にとどめたからだと思います。古来から戦争に明け暮れた欧州らしいとも感じます。

では。