由美 日経BP社 2006/1
小林先輩のアメリカ論。日下先輩よりも、シャープにアメリカを斬っていて、感服仕りました。軸になるのは、アメリカの階級社会についての論考。
- 特権階級
- プロフェッショナル
- 貧困層
- 落ちこぼれ。
アメリカ版士農工商とでも言いましょうか。自由・平等・民主主義の国の矛盾をあざやかに描いています。
あとがきのこちらの言葉が象徴的。
国王らしき人の肖像画下には「私はすべての人のために統治する」、聖職者の肖像画下には「私はすべての人のために祈る」、軍人らしき人の肖像画下には、「私はすべての人のために戦う」、そして、農民や職人たちの絵の下には、「我々はすべてを払う」と書かれてあった。p.284
アメリカの金権体質については、南北戦争の解説が興味深いものでした。南部が、敗戦のハンデを克服できないのに比べると、日本が敗戦から急速に経済回復したのは、やっぱり奇跡だなと思いました。
第5章は、教育の問題。レベルが低くなった原因をそのメンタリティに求めています。
アメリカの英雄像には、高等教育は不要で、その代わり、自然の中で素朴に育ち、強く、勤勉な、人殺しであることが不可欠だ。p.178
大統領選挙になると、候補者は大統領にふさわしいキャラクターを強調し、決して学歴を宣伝しない。というのも、言われてみれば、その通り。
本書は2006年なので、オバマのSNS選挙後にも、この考え方が有効なのか検証したいところです。
各章の内容は、他書でも指摘されてきたことですが、みごとなまでにひとつの絵にまとめており、アメリカの通奏低音がしっかりと聞こえてきます。女性ならではのシビアな観察眼を堪能させていただきました。
では。
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