波乱の時代(上)
アラン グリーンスパン
元FRB議長の回顧録。単なるセントラル・バンカーの人生にとどまらず、世界経済を見るエッセンスがちりばめられています。在任中の18年間は、「アランの時代」であり、この期間を振り返ることが、今後20年を見通す基礎となるのだと思いました。
世界経済については、インフレ率の低下についてp.23以降で語っています。
世界GDPで2001年以降、貯蓄率の低い先進国の比率が低下し、貯蓄率の高い途上国の比率が上昇したことから、世界の相貯蓄が投資計画の総額を大きく上回った。(中略)この貯蓄過剰に、グローバル化、技術の進歩による生産性の上昇、中央計画経済から競争市場経済への労働力の移動がくわわって、先進国のすべてと途上国のほぼすべてで実質金利と名目金利がともに低下し、インフレ率が低下している。
アメリカ経済については、クラッシュからの復活力について述べているところが印象的でした。
過去20年間に、アメリカ経済はショックからの回復力を強めてきた。金融市場の規制が緩和され、労働市場がはるかに柔軟になり、最近には情報技術が大幅に進歩したため、ショックを吸収して回復する能力が高まっている。p.16
これは、かつて日本のお家芸でしたね。ニクソンショック、オイルショック、円高危機とどれをとっても、他国が驚くような速さで克服してきた。バブル崩壊は、それを上回る破壊力だったとしても、21世紀に入ってからのパンチ力のなさを改めて感じました。
長期間にわたって、政府の仕事に携わったことから、歴代大統領の比較も、説得力があります。クリントン大統領の評価が高いですね。現在の政権については、こんなコメントがありました。
わたし自身も、四半世紀前にホワイトハウスの輝きにはじめて触れたときとは違った人間になっていた。古くからの友人もそうだった。
日本経済については、p.4あたりから触れています。自国資産を好む「ホームバイアス」によって、0.5%にまで低下した10年物国債。
日本は外国人投資家に助成金を支給してきたようなものだ。
海外からみれば、これが素直な感覚なのでしょう。今後については、
人口と労働力の減少を特徴とする厳しい現実に直面する。この点は、後に論じるが、出生率が予想外に上昇するか、文化の衝突を覚悟して大量の移民を受け入れない限り、世界と東アジアのGDPに閉める比率が低下するとともに、日本の国際的な地位が低下していく可能性が高い。
と述べています。日本のデフレには強い関心があったようで、p.333では、2003年6月に1%へ利下げした際に、日本のデフレが念頭にあったと書いてあります。その後、不動産価格上昇について述べているので、現在のサブプライム問題の参考になります。
これも、前述の長期金利の低下により世界的な住宅ブームが起こったからなんですね。エコノミスト誌の数値によれば、
2000年から2005年までに先進国の住宅用不動産市場の総額が、40兆ドルから70兆ドル以上に増加したと推定している。この増加のうち、最大の部分を占めるのはアメリカ一戸建て住宅の8兆ドルである。p.337
2008年はどうなることでしょう。
では(^^)/~