トータル・リスクマネジメント
竹谷 仁宏 2003/9 ダイヤモンド
コンプライアンスとう言葉が定着してきたこともあり、この手のリスク・マネジメントの本も増えてきました。そろそろ、守りのリスク管理から攻めのリスク・マネジメントを目指す時期だと思いますが、その具体的な方法について、コンパクトにまとまっています。
言われてみれば、リスクに対応する日本語って定着してませんね。リスクと危険はイコールではありません。リスクという言葉は“冒険的に何かをやり遂げる”という考え方が元になっています。
ウォルマートやユノカルは、リスクを『事業目的の達成を妨げるすべてのもの』と定義しました(p.17)
『リスクを隠蔽しない』
『リスクを悪者視しない』
『リスクをコントロールすること』
リスク・マネジメントは、次の5つのステップから構成されています(p.22)
1. リスクの洗い出し
2. リスクの計量と評価
3. リスクに適した管理方法を組み合わせる
4. リスクのモニタリング
5. 定期的な見直し
洗い出しでは、p.30の「リスクマップ」を作成することで、視覚に訴えることが有効ですね。
リスクの計量では、デュポンのEaR(Earning at Risk)を紹介しています(p.44)。VaRの事業会社版ですが、期間は四半期、信頼区間も95%に設定しています。
リスクの評価ができると、リスクに応じた収益を上げているか点検できるようになります(p.54)。
金融サービス部門以外の一般の事業組織では、資産の中身を容易に入れ替えることができません。それだけに、事業部門間の適切な資本配分の見直しが遅れることはきわめて一般的に起こることになります。さらに、リスクの大きさを無視した資本配分が継続さえると、収益の変動のきわめて大きな事業が経営者の嗜好や組織の看板事業だとの位置づけで保護されることは珍しいことではなくなります。ERM導入後のリスクを重視した経営では、このような状況は許されなくなります。
第4章では、具体的なトータル・リスクマネジメントの導入が解説され、p.186では具体的なリスクが例示されています。
こうした作業は、社内ではなかなか評価されにくいものですが、急激に事業構造を変えるときなどは、ぜひ取り組んでおきたいものですね。
では。