稲盛 和夫 日本経済新聞出版社 2017/9/2
稲盛さんのJAL改革記録。経理が組織を変えるのがわかります。こういう社内移転価格の話は、様々な教科書にかかれていますが、稲盛さんだと説得力が違います。
JALを改革したときのポイントは、下記の通り。
- 新たな経営理念の確立
- フィロソフィーをベースとした意識改革
- アメーバ経営の導入
- 「人のため、世のため」という思いの共有
- トップの無私の姿勢
3については、切り口を、部門別、路線別、路便別に設定していました。(第4章)
サイクルについては、ほぼリアルタイム。日々採算をつくっているのだという意識を持って経営にあたらなければならないのだそうです。
Transfer priceとワンセットの部門間の交渉ですが、フィロソフィーの共有によって避けるのだとか。MBAの時のManagerial Accounting の授業を思い出しました。振り返れば、学生に部門間の仕切値の交渉を体験させたかったのだと思います。しかし、当時の私には意味がわかりませんでした。日本企業ほどの社内情報密度であれば、今、営業が厳しいのか、製造側がどれだけの原価でやっているのかわかるはずで、落ち着くべき価格に落ち着くはずです。しかし、部署の利益でボーナスが変わるアメリカ企業では、社内といえども、大きな声を出して交渉しなければなりません。
第4章では、細かなノウハウも開示していました。受注販売と在庫販売での価格設定の違いなどは、現場ならではのノウハウだと思いました。仕入れも、即経費計上し、在庫にしないなどは、管理会計のノウハウとしてアリかと。
あらためて、通読すると、とても京都(大学)らしい管理会計だと思いました。個人が競争して生き残るダーウィニズムではなく、今西錦司の共生論。日本企業の組織は共生しているんですね。それが、ユニークな管理会計を生んでいます。
では。