【本】日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ

日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ
飯尾 潤 2007/7 中公新書 (1905)

・参議院に大敗しても、首相続行
・防衛大臣が次官を交代させようとしたら次官が反発。

と日本の統治構造は、どうなってるのかと思わせる今日この頃。基本に戻って、日本の民主主義とはどういうもののか、復習するのに最適な本でした。

日本では一般に、大統領制では大胆な権力行使ができるが、議院内閣制では抑制的な権力行使しかできないと思われている。しかし欧米での認識は逆である。

小泉政権でこのことは実感できるようになりましたが、私たちの「常識」がいかに根拠のない理解だったかよくわかりました。
たとえば、面白いのは、

実際には、当たり前のように各国務大臣が、各省庁を指揮監督しているが、憲法の条文上は、どこにもそうした大臣の権能は出てこない。p.27

という点

。国務大臣の職能は、第74条で「主任の国務大臣」として法律や政令に署名すると記されているだけだが、内閣総理大臣の職能は第27条で明確に規定されている点である。つまり「内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する」とある。

ということで、日本では、内閣総理大臣は、強大な権力を持っている一方で、国務大臣の役割はあいまいなのですね。
また、日本の政党の特色も面白いですね。

日本の政党の特徴は、このように多くの活動が党本部で行われていることでもある。とりわけ与党経験の長い自民党においては、党本部での活動が、実質的な立法活動であるといってもよい。
諸外国にも、政党によっては立派な党本部の建物を持つところがあるが、これほど党本部の、とりわけ日常的な政策審議機能が重要な意味を持つ国は稀である。p.82

議会での低調な議論の裏返しとでもいいましょうか。思えば、あの貧しかったころに国会議事堂を建立しようとした心意気はすばらしいのですが、今行くと廊下は暗く、会議室にテレビモニター付の会議システムがあるわけでもなく、ここで議論を効率的にしようという意気込みは感じられません。
また、日本の政党は足腰が弱いため「政界再編」が起こるが、「政党再編」は起こらない。p.133 他国では、政党を支持する人が長い時間をかけて変化した結果、政党が再編されるのに対し、日本では議員がついたり離れたりして、勢力関係が変わる。といわれてみればハッとすることがいくつもありました。
次の総選挙までに、自分なりに整理できればと思っています。

では。

アマゾンの書評を読む

【追記】
・本書がサントリー学芸賞を受賞しました。
・東洋経済 2007/11/17 p.157 に書評が掲載されています。