もう、国には頼らない。
渡邉 美樹 日経BP 2007/6
ワタミの社長による経営論。日経ビジネスに連載されていたものですが、一冊の本として、十分に読み応えがありました。
これから、高齢化社会になるにつれて、企業以外の組織のマネジメントが、重要になってきます。4人に1人が65歳以上となり、そのほとんどが、会社に所属しなくなるわけですから。
戦後に創業したた企業の多くは、軍隊の組織運営を参考に企業を経営してきました。今度は、その企業でのマネジメントを非営利組織にどのように展開するのかが問われてくると思います。
渡邉社長は、実際に、学校、病院、介護、農業の経営に携わった経験があるだけに、その意見には、かなりの説得力があります。
郁文館には、360度評価を入れたんですね。アメリカの大学で教授の評価を初めてしたのですが、新鮮な経験だったのを思い出します。
むしろこの3年間の経験を通じて、評価がぶれたり、あてにならなかったりするのは、子供たちの評価ではなく、教師たち同士の評価である、ということがはっきりしました。先に記したように、教師同士の評価は年功序列で年齢が高くなるほど評価も高くなる、という傾向が如実に出てしまった(P.112)
のだそうで、こうしたところに学校の経営が停滞する原因があるんですね。
いじめについても、
生徒の問題として語られがちですが、クラスを担任する教師によって、いじめが起きる起きないの差がはっきりある。ちゃんとした教師がクラスを担任すれば、いじめはない。教師に子どもたちが見えていないから、いじめが起きる。だから私は、いじめは100%教師の問題、学校の問題だと繰り返し申し上げています。(P.116)
すでに問題が起こってしまってから保護者に連絡すると、加害者側・被害者側を問わず「何できちんと見ていなかったのよ!」とすごい形相で学校に詰め寄ってこられます。
一方、問題を予見して、これから悪いことにつながりそう、いじめにつながりそうだということであらかじめ指導しますよ、ということを事前にアナウンスすると、保護者の方たちからも実に素直に納得いただけますし、とても感謝してもらえます。(p.119)
学校の経営数値といえば、国内の私立高校の50%が赤字なんだそうです(P.124)。最大の費用項目は人件費。そこで、郁文館では、人件費の上限を総予算の50%とし、その分配方法を教師に考えさせました(P.125)。結果、70%あった売上高人件費率が、50%にまで低下したそうです。企業であれば、最初に考えるようなコスト構造も、NPOでは位置づけが難しいのですね。
同様な経営改善を、岸和田盈進会病院、ワタミの介護、ワタミファームでも展開してて、それぞれの抵抗要因について、的確にまとめてあります。
21世紀の「この国の形」を考える上で、大変参考になりました。
では(^^)/^